【伝統的工芸品のご紹介】~土佐和紙(高知県)~
2022.11.28 伝統工芸品について
【名称】
土佐和紙
【土佐和紙の産地】
高知県土佐市・いの町周辺
【土佐和紙とは?】
高知県土佐市・いの町周辺で作られている和紙のこと。
福井県の「越前和紙」、岐阜県の「美濃和紙」と並んで、三大和紙のひとつとして有名です。
1976年に伝統的工芸品に指定されました。
下記のような用途で使用されています。
*昔 → 提灯(ちょうちん)、薬入れ、財布など
*現在 → 襖(ふすま)、食品の包装、カレンダー、ちぎり絵、書籍や絵画の修正など
特に書籍や絵画の修正では、国内はもちろん海外でも使われており、非常に高い評価を得ています。
【土佐和紙の特徴】
土佐和紙の大きな特徴は、「種類の豊富さ」と「薄くて破れにくい丈夫さ」。
現在でも約300種類の和紙が生産されています。
日本各地に和紙の産地がありますが、多様な種類を生産しているところは少なくなってきているのが現状です。
また、「カゲロウの羽」と呼ばれ世界一薄い紙である土佐典具帖紙は、なんと厚さがわずか0.03mm。
極薄なのに強度もあり、これは土佐和紙特有の原料である
「楮(こうぞ)」と「一級河川・仁淀川」の自然の恵みによって生み出されています。
【土佐和紙の歴史】
いくつかの言い伝えがありますが、
一番有力なのは、紀貫之(平安時代の歌人・三十六歌仙の一人)が伝えたとされる説。
紀貫之は930年に土佐守となり高知にやってきますが、その際に製紙業の発展に尽くしたと言われているからです。
この説から、土佐和紙は既に1100年近くの歴史がある工芸品であることがわかります。
平安時代に土佐周辺で作られた和紙が「天皇への献上品」として
納められていたことが記されている文献(延喜式)が残っています。
また、鎌倉時代には、幕府の公用紙として使われていました。
このことからも、当時から土佐和紙の品質が評価されていたことがわかるでしょう。
当時、貴族の遊びであった「貝合わせ」にも和紙は使われていました。
その後も、着物や人形、紙幣など、時代の移り変わりとともにさまざまな用途で使われ続けています。
土佐和紙は土佐藩からの保護を受け、江戸時代でも幕府の献上品として選ばれていました。
現在も変わらず土佐市・いの町を中心とした地域の特産品であり、その伝統は脈々と受け継がれています。
【土佐和紙の製作工程】
*原料となる植物
「楮(こうぞ)」「三椏(みつまた)」「雁皮(がんぴ)」の樹皮
①煮る
楮を原料にした場合、樹皮の白と黒の部分を分けて洗い、一定時間冷水にさらすのが基本的な流れです。
その後、消石灰などを入れてアルカリ性にしたお湯で、原料を2~4時間ほど煮込んでいきます。
このようにアルカリ性にしたお湯で煮込むことで、原料から繊維だけを取り出すことができるようになります。
※作る紙の用途や質によって、作成方法は変わってきます。
②水洗い&天日にさらす
アルカリ性のお湯で煮込んだ原料を、清流で洗い流します。
「薄く広げて洗い流す」作業を一日かけて何度も繰り返し行うので、手間と労力がかかる作業です。
水洗い後、3~4日ほど天日干しを行います。
天日干しすることで、蒸した際に色味の付いた原料が少しずつ白くなっていくのです。
なお、さらし液などを使って漂白する場合もあります。
③ちり取り
ここまでの作業で残っている樹皮の一部やホコリなど、余計なものを丁寧に手作業で取り除いていきます。
ちり取りをしっかり行うことで、より丈夫な和紙に仕上げることが可能になります。
④たたく
ちり取りを行った繊維を丸めて、棒で叩いていく作業です。
叩くことで、⑥の作業時に繊維を分解しやすくなります。
よく叩かれた繊維は、水に入れただけでふわっと広がっていきます。
なお、最近は手作業ではなく機械を利用して叩き作業を行うことも増えてきました。
⑤こぶり
叩いた原料を、今度は水を張った篭の中に入れて沈め、かき混ぜながら分散させていきます。
「こぶり」は、紙の質に直結するとても重要な作業です。
⑥紙漉き(かみすき)
紙漉きを行う事前準備として、原料となる繊維をほぐしながらノリを加えて、紙の状態にします。
土佐和紙では、ノリとして「トロロアオイ」という植物が使われることが多いです。
使うノリの量をどのくらいにするか、分量の調節はとても大切。
なぜなら、量が少ないと紙漉きの際に水が抜けてしまい、逆にノリが多すぎると
水捌けができなくなってしまうからです。
紙漉きには、「流し漉き」「溜め漉き」という2つの方法があります。
・流し漉き
「漉き舟」ですくって、揺すったり漉きながら繊維を均等にしていきます。
繊維の厚さが均一になるように調節するのが難しく、職人の技術が必要です。
・溜め漉き
繊維をすくった後、水を抜いていく作業です。
こちらも同じく、全体を同じ厚みにしていくには技術を要します。
一般的に、薄い紙を作るときは「流し漉き」、厚い紙を作るときは「溜め漉き」を行います。
⑦脱水
紙漉きを行った後、重石を乗せて一晩置きます。
そして、翌日に圧搾機を用いて水をゆっくりとしぼり出し、脱水するのが一般的です。
⑧乾燥
主に用いられる乾燥方法は、「天日乾燥」「火力乾燥」の2つです。
・天日乾燥
脱水した紙を1枚ずつ丁寧に干板に張り付け、陽の光で乾燥させる方法。
季節、天候、気温や日差しの強さに左右されてしまうが、完成後の強度や風合いは火力乾燥に勝る出来栄えになる。
・火力乾燥
ステンレス板などに張った紙を、蒸気などの熱で乾燥させる方法。
天候や季節を選ばずに行えるのがメリット。
⑨断裁・荷造り
同じ大きさにそろえるため、裁断します。
出荷のため、切りそろえた紙を取引単位にまとめ、包装して荷造りを行います。