【伝統的工芸品のご紹介】~三線(沖縄県)~
2022.11.30 伝統工芸品について
【名称】
三線(さんしん)
【三線の産地】
沖縄県那覇市など
【三線とは?】
三線とは、沖縄県那覇市などを中心に作られている楽器です。
三線を中心楽器として使っているのは、2010年にユネスコ無形文化遺産リストに登録された組踊(くみおどり)、
沖縄県無形文化財である琉球歌劇です。
現在では、こうした古典音楽や民謡だけではなく、
クラブミュージックやポップスなどあらゆる音楽ジャンルで演奏されています。
三線から奏でられる独特な音色は、今も昔も多くの人々を惹きつけています。
2018年11月、伝統的工芸品に指定されました。
【三線の特徴】
大きく「棹(さお)」「胴(どう)」「糸巻き」の3つのパーツで構成されています。
胴部分に「蛇皮」が使われているのが特徴。
伝統的な型は全部で7種類あり、主に棹の形によって分類されています。
また、それぞれの型には、その型を生み出した名工たちの名前などが付けられています。
①真壁型
7つの型の中で、最も普及しているが真壁型です。
棹が細くて全体的に女性的なシルエットであり、一番優美な型であるとも言われています。
②南風原型
7つの型の中で、一番古い型です。
歴史書『球陽』の中で、当時の名工・南風原に名前の由来があることが記載されています。
書かれているのが1710年なので、それ以前から南風原型があったと考えられるでしょう。
先端(天)のカーブが小さく、棹が細いことなどが特徴です。
③知念大工型
先端(天)の面が広く、大きく曲がっていることなどが特徴です。
特に低音が良く響くと言われています。
④久場春殿型
名前の通り、職人・久場春殿によって作られた型であると言われています。
7つの種類の中で、最も棹が太い点が特徴です。
⑤久葉の骨型
横から見るとクバの葉の葉柄部分に似ていることから、名前が付けられたと伝わっています。
棹が細く、見た感じが華奢なイメージです。
その見た目通り、繊細な音が出る型であると言われています。
⑥平仲知念型
南風原型を少し小さくしたような形で、中央が丸みを帯びているのが特徴です。
7つの型の中で、一番軽いです。
⑦与那城型
三線の名工・与那城が生み出した作品であると言われています。
音量が大きく、そしてよく響く型であるとされています。
三線作りには職人たちの洗練された技術が必要であり、完成までに数十年かかることも珍しくありません。
また、蛇皮が張られた三線を持つことは富の象徴でもあり、昔から縁起を担がれています。
例えば、床の間に三線を2丁飾って「夫婦三線」と呼んだり、
漆塗りで作られた箱の中に三線を納めて「飾り三線」と呼んで大切にしています。
楽器として身近なものであることはもちろん、沖縄文化・沖縄に住む人々にとって、
さまざまな価値や意味を持った存在として欠かすことができません。
【三線の歴史】
14世紀後半、中国大陸から琉球王国に持ち込まれた「三絃」が三線の原型です。
15世紀に入ると、士族のたしなみとして三線が推奨されます。
そして17世紀初めには、琉球王国の宮廷楽器として正式に認められ、あらゆる行事で使われるようになりました。
また、この頃に三線制作者を管轄する役職が設けられます。
その結果、三線制作の技術を身に付けた名工たちが次々と誕生し、素晴らしい楽器が制作されるようになりました。
組踊など琉球独自の文化が栄えたこともあり、三線は宮廷楽器の中でも主要な楽器として、
不動の地位を得るようになったのです。
転機になったのは、1879年。
琉球藩は沖縄県になり、三線の担い手であった士族たちは、それまでの地位を没収されてしまいます。
しかし、元士族たちが日本各地へ下るきっかけとなり、三線は庶民へと広く伝わっていきました。
第二次世界大戦で数多くの三線が被害にあってしまいましたが、戦火を免れた名器たちが
重要文化財として保護され始めます。
琉球王国時代から始まった三線文化は、さまざまな困難を乗り越えながら現在も伝承され続けています。
【三線の製作工程】
①型決め
先に紹介した7つの型から、どの型で三線を作るか決めます。
決定後、図面や型紙などを用いて、必要な寸法を木材に書き写します。
②裁断・ヤスリ掛け
木目を見つつ、寸法にしたがって棹を切り出し、その後にヤスリをかけます。
棹の上部は型を決める上でとても重要ですし、三線の全体的なバランスにも関わってくる重要な部分です。
そのため、職人によってすべて手作業で行われ、入念なチェックをしつつ仕上げていきます。
③漆塗り・研ぎ
「漆を塗って研ぐ」という作業を、3~10回繰り返し行います。
この作業を行うことで乾燥が原因のヒビ割れを防止し、美しく仕上がるようになります。
④蛇皮の成形
三線の胴部分に合わせて、使用する蛇皮をカット。
切断後、裏側に布テープを張って補強しつつ、胴の形に添いながら丸みを作り、締め具に縫いつけていきます。
この際、蛇皮がズレないように、クギを使って固定しながら作業を行います。
⑤皮張り
胴の表と裏、2回の皮張り作業を行います。
両面に張った後、締め具にくさびを打ち込みます。
打ち込むと皮が引っ張られて伸びていくので、胴の大きさに合うように調整していきます。
⑥組み立て・調整・仕上げ
棹に糸巻きをはめたら、胴に差し込みます。
この一連の組立作業を「部当て」と呼びますが、完成後の三線の音色に大きく影響してきます。
職人たちは、棹と胴の角度を慎重に調整しながら作業を行います。
「歌口をはめる」「胴巻きつける」「糸掛をつける」「カクライに絃をまきつける」などの組立作業を行い、
最後に駒を立てたら完成です。