【伝統的工芸品のご紹介】~大谷焼(徳島県)~
2022.12.13 伝統工芸品について
【名称】
大谷焼(おおたにやき)
【大谷焼の産地】
徳島県鳴門市大麻町(なるとしおおあさちょう)
【大谷焼とは?】
約230年前から徳島県鳴門市大麻町で生産されている陶器です。
「登り窯」のサイズは日本で一番大きいと言われており、大型の陶器でも問題なく焼くことができます。
大型の陶器だけではなく、食器や茶道具などの日常生活で使用する品々、
さまざまな装飾品など幅広く作られています。
一般的なのはこげ茶色ですが、銀色など彩りのある作品も製作されています。
2003年9月、伝統的工芸品に指定されました。
現在、大麻町にある窯元は6軒です。
【大谷焼の特徴】
大谷焼の特徴は、「土」と「製法」です。
土は、地元・大麻町で採取される「萩原粘土」「姫田粘土」「讃岐粘土」を基本に、
これらと同様の粘土を主原料としています。
鉄分が多く含まれているのが特徴で、「ざらざらした感じの風合い」「わずかに光沢をもつ質感」に
親しみを感じるファンが多く存在します。
製法で代表的なのは、「寝ろくろ」。
人間の身長ほどある大きな甕(かめ)を作るとき、用いる製法です。
作業台の下に寝転んだ職人たちが、自身の足でろくろを蹴って回すことから、この名が付けられました。
【大谷焼の歴史】
大谷焼が始まったと言われているのは、1780年です。
豊後国(現在の大分県)の焼き物細工師・文右衛門が、大谷村(現在の鳴門市大麻町)を訪れました。
その時に赤土を使って、ろくろ細工による陶器を製作したそうです。
翌1781年、当時の徳島藩では珍しかった陶器に興味を持った11代藩主・蜂須賀治昭が、
藩が運営する窯(=藩窯)を築きます。
ここで、阿波国(現在の徳島県)で初めてとなる染付の陶磁器が製作されました。
しかし残念ながら、藩窯はいったん閉鎖されてしまいます。
(閉鎖の原因は、九州から高額の原材料費を取り寄せていて、採算が合わなかったため)
1784年、「連房式登窯」が村内に築かれ、日常生活で使用する陶器を焼く「民窯」になりました。
この窯の建設には、藍商人である賀屋文五郎が尽力したそうです。
また、信楽焼の職人からの指導によって、陶器作成に必要な伝統的技術を学んだのが「納田平次平衛」。
彼が中心になり、陶器生産をスタートさせたのが、大谷焼の原型であると言われています。
【大谷焼の製作工程】
①土の粉砕
大谷焼の原料となる土を準備したら乾燥させ、その後、細かくするために打ち砕きます。
②ふるいにかける
砕いて細かくした土をふるいにかけ、不純物を取り除きます。
③水簸(すいひ)
不純物を取り除いて精製できたら、水槽の中に入れて撹拌します。
土を撹拌しつつ、別の水槽に流し入れながら、土を少しずつ移し替えていきます。
土を移動させたら、ふるいで不純物を取り除き、陶土が沈殿してくるまで放置しておきます。
なお、陶土とは、陶磁器の製作時に使う粘土です。
陶土が沈殿したら盛り鉢に移し、今後の作業がしやすくなる固さになるまで、さらに置いておきます。
④土練り
まず行うのは、陶土の柔らかさを均一にするための「荒練り」です。
適度な固さになった陶土を円い形に広げたら、その上に裸足になった職人が乗ります。
しっかりと陶土を押し出すように、両足で力強く踏みつけていきます。
次に行うのが、陶土の中に含まれている空気を抜く「菊練り」です。
荒練りが完了した土を回しながら、じっくり練り込んでいきます。
⑤成形
土練りまで終わった陶土をろくろに移し、手作業で成形します。
もし大型の作品を製作する場合に用いるのが、2人1組になり、先述の「寝ろくろ」と呼ばれる伝統的な製法です。
1人が足で蹴るようにろくろを回し、もう1人が成形していきます。
⑥乾燥
成形した作品は、屋内で乾燥(陰干し)させます。
目安となる乾燥期間は、以下の通りです。
・小型作品 → 2~7日間ほど
・大型作品 → 20日間ほど
陰干し後、今度は天日干しします。
目安となる乾燥期間は、以下の通りです。
・小型作品 → 1日
・大型作品 → 2~3日
⑦施釉(せゆう)
施釉とは、釉薬を作品にかけていく作業です。
釉薬とは、作品に液体がしみ込むのを防ぐために用いられる粉末で、焼成によって溶けてガラス質になります。
また、表面に光沢を出す効果もあります。
施釉の方法として主に使われるのは、下記3つです。
・生掛け
施釉を行うだけで、素焼きをしない方法
・浸し掛け
素焼きが終わった作品を、釉薬に浸す方法
・流し掛け
作品にひしゃくなどを使って、釉薬を流し掛けていく方法
施釉後に素焼きを行いますが、窯の温度を約800℃にし、8~16時間かけてじっくり焼きます。
⑧窯詰め
窯詰めとは、作品たちを窯の中にきちんと並べていく作業のことです。
⑨焼成
約1200℃に温度を設定し、作品を焼き上げていくのが焼成です。
焼成する窯には、以下の3種類があります。
・登り窯
一般的な焼成日数は、5~6昼夜
・電気窯
・ガス窯
一般的な焼成日数は、1~2日
⑩検品・完成
焼成後、作品を窯から出したら、ひとつずつ割れや亀裂などがないか、チェックしていきます。
無事に検品が完了した作品は、完成品として販売され、お客様のもとへと届けられます。