【伝統的工芸品のご紹介】~博多人形(福岡県)~
2022.12.14 伝統工芸品について
【名称】
博多人形(はかたにんぎょう)
【博多人形の産地】
福岡県博多地区
【博多人形とは?】
福岡県福岡市の博多地区周辺で製作される「素焼き人形」のこと。
素焼き人形は、粘土を成形して乾燥させた後、850℃ほどの低温で焼き上げ、顔料で彩色した人形です。
多くのジャンルがある中、博多人形の代表格と言えば「美人もの」です。
時代とともに美人像も変わるので、その時々によって表情が少しずつ変化していることが知られています。
1976年2月、伝統的工芸品に指定されました。
【博多人形の特徴】
博多人形の特徴として挙がることが多いのは、以下になります。
・表情が繊細かつ豊富であること
・丁寧で細かい彫り込み技術
・素晴らしい曲線美
・鮮やかではあるが、落ち着いた雰囲気の発色
1900年に開催されたパリ万国博覧会など、国外の博覧会や展覧会にも数多く出展されています。
その度に高い関心を集め、現在では、さまざまな国に輸出されるようになりました。
また、海外から来賓の方々が訪れた際には、記念品として重宝されています。
このように福岡県だけではなく、日本として世界に誇れる工芸品のひとつです。
博多人形には、多くのジャンルが存在することが知られています。
その中でも代表的で有名なのは、以下ではないでしょうか。
・美人もの
・歌舞伎もの
・縁起もの
・童もの
・武者もの
・ひな人形 など
【博多人形の歴史】
博多人形が生まれたのは、関ヶ原の戦いがあった1600年にまで遡ります。
戦いの後、福岡藩の初代藩主・黒田長政が福岡城の築城を行いました。
築城した際に、瓦職人・正木宗七が、瓦を作る粘土で作った人形を進呈。
この人形が、博多人形の起源であると言われています。
その後、素焼き人形はもとより、人形製作の技能などが博多地域に広がったことで、
博多人形の伝統的文化の基礎が築かれました。
時代は経過し、今ある博多人形の原型が誕生したと伝えられているのは、1818年以降です。
中ノ子吉兵衛が生み出した、色とりどりの美しい素焼き人形から始まったと言われています。
現在のように「博多人形」と呼ばれるようになったのは、1890年に開催された国内の博覧会です。
博覧会は、国内の産業発展を促すために、政府主導で開催されていました。
人形の優雅さや美しさから表彰されることになり、表彰状に「博多人形」と記載されたのです。
この出来事がキッカケとなり名前が誕生し、日本国内に広まります。
また、先述した1900年開催のパリ万国博覧会に出展されたことで、世界中から注目を浴びる存在になりました。
【博多人形の製作工程】
①土練り
人形の原料となる土を練り上げていく工程です。
使用する土は、福岡近辺で採取したものを使います。
練ることで土に粘りが出てきて、今後の手順を進めやすくなるのです。
まず土を乾燥させ、その後に粉砕します。
粉砕した土を水に混ぜたらよく撹拌し、砂などの不純物を取り除き、
粒子が細かい土だけを残す「水簸(すいひ)」を行います。
最後に(イメージとして)耳たぶの柔らかさになるまで土を練り上げたら、この工程は完了です。
②原型
イメージする人形を形作っていく作業です。
ヘラなどの道具や指先を使って、顔や手足などの全体像を作り上げていきます。
職人の技術を要する繊細な作業なので、長い時間を要します。
原型を完成させるまでに、数ヶ月の期間がかかることも珍しくありません。
③型取り
完成させた原型を、可能な限り細かい部分まで分解し、石膏でひとつずつ型取りを行っていきます。
博多人形の特徴に、顔の表情だけではなく指先などの細かい所までの繊細さが挙げられます。
原型のままではなく分解して行うことで、より正確に、そして美しく型取りを行えるようになるのです。
石膏を流し込んで型を取ったら、日陰で3日ほどしっかり乾燥させていきます。
④生地作り
生地作りとは、石膏の型に粘土を貼りつけていき、その貼りつけた粘土で人形全体を形作っていく作業です。
貼りつけるために用いる粘土は、縦横30cm・厚さ1cmの正方形に切り分けます。
切り分けた粘土を指で押しながら、石膏の型に数ミリ単位でしっかり押し付けていきます。
粘土を水で溶かしたものを「どべ」と言いますが、どべを粘土に塗って、接着させるのです。
接着させたら石膏の型から外して、原型と同じ姿になるように仕上げてから乾燥させます。
石膏の型が入っていた部分は空洞になりますが、
焼成する時に人形の内も外もじっくり焼き上げるためであると言われています。
⑤焼成
電気釜やガス窯を使い、約900℃の温度で型を素焼きしていく作業です。
低温で焼き始めてから徐々に高温にしていくことで、絵具の吸い込みが良くなります。
⑥彩色
素焼きした人形に、彩色する作業です。
色付けに使う顔料は「胡粉(ごふん)」と呼ばれ、カキやホタテなどの貝殻から作られています。
一般的に、顔→着物→帯→模様の順番で色を付けていきます。
作品によっては、光沢を出すために「本金みがき」や「金箔貼り」を行う場合もあります。
⑦面相
彩色した顔に表情を付け、魂を込めていく作業です。
主に行うことは、以下になります。
・口紅入れ
・目入れ
・眉毛描き
この工程は、熟練した技術を持った職人のみ許されています。
面相によって多彩な表情を持つ人形へと変化していきますし、
博多人形の出来栄えが決まるとても重要な作業だからです。
使用するのは筆のみで、下書きは一切行いません。
⑧完成
ここまで紹介してきた工程を経て、博多人形が完成します。