【伝統的工芸品のご紹介】~勝山竹細工(岡山県)~
2022.12.23 伝統工芸品について
【名称】
勝山竹細工(かつやまたけざいく)
【勝山竹細工の産地】
岡山県真庭市勝山地域
【勝山竹細工とは?】
岡山県真庭市勝山地域で製作されている竹細工製品のこと。
よく知られているのが、「そうけ」や「そうき」と呼ばれる「ザル」や「カゴ」です。
一言でザルと言っても、さまざまな場面で普段使いされています。
例えば、日々の生活で使われる場面として、以下が挙げられます。
・米を研いだ後、水切り用として使われるザル(米あげぞうけ)
・夏場などに炊いたごはんが傷むのを防ぐため、軒下に吊るして保管しておく用のザル(めしぞうけ)
また、農作業を行うときにも頻繁に使われています。
・米や小麦、とうもろこしなどの穀物を入れるザル(大ぞうけ)
・収穫した野菜や果物を運搬するためのザル(みぞうけ)
紹介した4つのザルが、代表的な産物として有名です。
その他、「パンを入れるカゴ」「外出時にバッグのように使える手提げカゴ」「花を飾るための花器」など、
時代のニーズに合わせた多種多様な製品が誕生し続けています。
1974年8月、伝統的工芸品に指定されました。
【勝山竹細工の特徴】
・真庭市周辺で採れるマダケを素材として使っていること
竹細工は真庭市だけではなく、日本全国のあらゆる地域で作られています。
一般的には「モウソウチク」「ハチク」が使われることが多いですが、
勝山竹細工では、地元で採取されたマダケを使います。
・最小限の加工しか行わず、青竹のまま作っていること
伝統的に、素材の良さをそのまま活かし、青竹そのもので作る方法を取ります。
こうすることで、頑丈かつ使いやすい製品にすることが可能です。
一方、他の産地で製作されている竹細工は、マダケを煮たり、火で炙ったものを素材として使用することも多いです。
勝山竹細工は青竹のまま使うので、本来持っている自然美をそのまま活かすことができます。
また、時間の経過とともに変化していく色味を楽しむこともできるでしょう。
【勝山竹細工の歴史】
勝山竹細工の起源について、はっきりとはわかっていません。
今から160~170年ほど前から、製造されていたのではないかと想定されています。
その理由は、文書によってその存在を確認できるからです。
1860年に書かれたと伝わっている山谷家古文書、そして1877年に提出されたと言われている酒屋免許嘆願書の中に、
「張そうき」と呼ばれる竹カゴ、穀物などを運搬するために使われた「亀そふけ」の記述があります。
日用品なので、当時使われていて現存しているものは、ほとんどありません。
しかし、上記古文書によって、1860年時点で勝山竹細工の製品が存在していたことがわかります。
また、自分の家に竹細工職人を招き、年間で必要な分の製品の作成をお願いする家もあったことが伝えられています。
こうしたことをふまえると、庶民の生活用品や農作業になくてはならない必需品として、
広く普及していた可能性が高いのではないでしょうか。
日々の生活に欠かせないものであったことから、時代の変遷とともに販売される地域が拡大していき、
やがて全国へとその名が知れ渡るようになりました。
【勝山竹細工の製作工程】
①竹の採取・洗い
先述の通り、なるべく加工しないままのマダケを使用して製品を作っていきます。
マダケの質がそのまま製品の品質にもつながるので、「どの竹を素材にするか」を精選することがとても重要です。
竹の成長(太さや高さ)は1年ほどで止まり、その後は色味や堅さが変化していきます。
竹細工の素材に適していると言われているのが、3~5年経ってツヤや弾力が十分になった最高品質の竹です。
また、切り出しに最も適しているのは虫による被害の少ない11~12月なので、
その間に年間で製作する分の竹を一気に切り出します。
専用のノコギリ(竹挽き鋸)を使って、1~5mほどに切っていきます。
切った後、たわしで汚れをきれいに落としたら完了です。
②竹割り
竹割りというのは、これから作っていく製品の大きさに合わせて「竹を割っていく」こと。
実は竹割りが、全ての工程の中で最も職人の腕が試される作業です。
その証拠に、竹割り作業を完全に習得するまでには、少なくとも2~3年は必要であると言われています。
なお、以下の3つの順番で行います。
・荒割り
専用のナタを用いて、切り出した竹を二つに割ること。
・小割り
荒割りで2つに割った竹を、さらに細く割っていくこと。
小割りで切った細い竹は、骨や最後の仕上げで用いる緑部分に使います。
完成品のツヤに直に影響してしまうので、小割りで使用するナタの切れ味は気を付けなければいけません。
・ひご作り
さまざまな用途に合った竹の細さを整えていく作業を、「へちり」と言います。
この際に作る、数ミリしかない細さにした竹の棒が「ひご」です。
ひごは、製品の強度を増すために使われます。
③編み組
編む作業は「仕かけ → 中組み → 縁作り」の順番で行っていきます。
・仕かけ
枠を決める作業のこと。
昔から受け継がれている、伝統的に使われている大きさを基に決めていきます。
枠が決定したら、それに合わせて縦は「ひご」、横は「骨」を通します。
・中組み
「骨」に「ひご」を通していく作業のこと。
中組みによって、職人たちはさまざまな模様を編み出していきます。
・縁作り
地元である勝山で採れたツツジフジを使用して、仕上げに縁を作ります。
なお、伝統的工芸品としてみなされるのは、ツツジフジが使われている製品のみです。
縁を針金で仕上げた場合には、伝統的工芸品ではなく工芸品として扱われます。
なお、勝山竹細工で主に使われる編み方は「ゴザ目編み」です。
竹は青い部分と白い部分があるので、それぞれの「ひご」を交互に編み込んでいく方法です。
とてもシンプルな見た目ではありますが、趣のある外観を作り上げていきます。
④仕上げ
職人の手によって最終チェックが完了したら、勝山竹細工の完成。
でき上がったばかりの製品からは、マダケの香りがするのも魅力のひとつです。