【伝統的工芸品のご紹介】~高岡銅器(富山県)~
2023.01.11 伝統工芸品について
【名称】
高岡銅器
【高岡銅器の産地】
富山県高岡市
【高岡銅器とは?】
富山県高岡市周辺で製作されている銅器のこと。
溶かした金属を型に流し込み、固めて作る鋳物です。
原料となる金属は、銅の他にスズなどもあります。
銅器と一口に言っても、花瓶などの小さいものから、寺院にある釣り鐘、大きな銅像などさまざま。
日本三大仏のひとつである「高岡大仏」は高さが16mありますが、高岡銅器で作られています。
高岡銅器の全国シェアは90%以上と言われており、かの有名な二宮金次郎像も高岡銅器です。
また、梵鐘(=お寺の鐘)の多くは高岡で製造されているので、「ほとんどの方が見たことがある」と言っても過言ではないかもしれません。
積極的に海外への輸出を行っており、諸外国から品質の高さを評価されています。
1975年2月、伝統的工芸品に指定されました。
【高岡銅器の特徴】
特徴は、大きく「鋳造技術」「加工技術」の2つ。
鋳造は、熟練した職人たちによって手作業で行われます。
加工技術には研磨、彫金(金属を彫ること)、象嵌(ひとつの素材に異なる素材をはめ込むこと)などがあります。
高岡銅器には、こうしたさまざまな加工技術が施されています。
職人たちの切磋琢磨によって技術が磨かれ、融合されることによって、発展を遂げてきました。
高岡銅器は、力強さだけではなく繊細さも兼ね備えています。
また、時間の経過とともに見せる表情も変化し、重みや深みも加わっていきます。
親から子へなど長期間に渡って使い続けることが可能なだけでなく、見た目の移ろいも楽しめるでしょう。
【高岡銅器の歴史】
起源は、今から約410年前まで遡ります。
1609年、二代目加賀藩主・前田利長が、高岡城に入城。
経済政策のひとつとして、1611年に7名の鋳造師を迎え入れました。
これが、高岡銅器のルーツであると言われています。
7名の鋳造師が中心となり、現在の高岡市金屋町に鋳物工場を建てます。
当初は農機具や調理道具など、主に日用品の鉄鋳物を生産していました。
その後1830~1840年代に、銅器の生産が始まったと伝わっています。
鉄と比較して、銅鋳物は繊細な形にも表現できる素材であり、加工性も高いです。
この特徴を活かすことで、仏具や美術品なども作られるようになりました。
明治時代になり、ヨーロッパ各国で開催された万国博覧会に、高岡銅器が出品されました。
日本らしいデザイン、品質の高さなどが高く評価され、ジャパンブームを巻き起こします。
明治~大正時代にかけて、茶道具や置物などが盛んに生産され、国内でも高岡銅器の名が広く知れ渡るようになりました。
その結果、贈答品としての需要も高まるようになり、さらなる発展を遂げて現在に至ります。
【高岡銅器の製作工程】
①原型製作
高岡銅器は、「鋳造」という加工法で製作されます。
鋳造とは、高温で溶かした金属を型に流し込むことで、製品の形づくりを行う方法です。
高岡漆器には、伝統的な4つの鋳造法があります。
・双型鋳造法
円筒(円錐)形の火鉢や茶釜、お寺の釣鐘などの製作に用いられる最古の技法。
・焼型鋳造法
小さな置物から大きな銅像まで、幅広い製品を作る際に用いられる技法。
・ろう型鋳造法
龍の形など、高精度な技法。
・生型鋳造法
量産に適しており、高岡銅器を発展させた技法。
原型製作とは、これから作る製品の原型を作ることです。
どのようなデザインにするか設計図を書いた後、樹脂や粘土などの加工しやすい材料を用いて作っていきます。
②真土つけ
鋳型の作成を行う工程です。
鋳型の中に溶かした金属を流し込んでいくので、耐火性のある材料(鋳砂など)を用います。
前工程で作成した原型に、離型剤(型からスムーズに取り外すために使用する薬剤)を塗ります。
その後、上から紙土や真土を重ねつつ原型を覆い固めて、しっかり乾燥させたら完成です。
場合によっては、鋳型の中に鉄筋を入れて補強することもあります。
③型合わせ
鋳型には、「外型」「中子型」の2つで構成されます。
中子型は、原型と比較して少し小さめです。
外型と中子型の間に溶かした金属が流れ込み、乾燥させれば製品となります。
鋳造製品の厚さは「外型と中子型の間にできる隙間」によって決まるので、同じ形の製品でも厚さを調整することが可能です。
厚さにムラがなく隙間が均一であるほど、美しい出来栄えの鋳物になると言われています。
④外型の完成
乾燥後、鋳型から原型を取り外せば外型の完成です。
⑤精練・溶解
精練とは、金属の純度を高めるために不純物を取り除いていく作業です。
また、固体の金属を溶解し「熔湯」を作ります。
熔湯とは、溶かした液体状の金属のことで、次の工程で鋳型に流し込む際に用います。
⑥鋳込み
鋳込みとは、熔湯を鋳型に流し込む作業のことで、およそ1150~1250度に溶かした銅合金を用います。
鋳込みで最も重要なのは、温度管理です。
高温になりすぎると完成後の鋳物の表面が荒れてしまい、美しい出来栄えにならない可能性が高まるからです。
また、熔湯自体とても高温なので、思わぬ事故が起きないように万全の注意を払わなければいけません。
⑦型外し
鋳型に流し込んだ銅が冷め切り、固まるのを待ちます。
凝固したら外型と中子型を取りはずし、製品を取り出します。
⑧仕上げ(研磨、彫金、象嵌、着色など)
最後の仕上げとして、研磨、彫金、象嵌、着色などを行います。
・研磨
単に磨くだけの作業も行いますが、腐食作用を用いて凹凸をなくしていく化学研磨を行うこともあります。
なお、製品は銅でできているので、酢酸液につけると比較的短時間で腐食作用を起こすことができます。
・彫金
「たがね」という工具を用いて、銅表面を彫り込んで模様をつける作業。
たがねは数十種類あり、それらを使い分けながら、職人たちはさまざまな美しい模様を創造していきます。
仏具などの鋳物に彫金を施したものを「唐金鋳物」といいますが、高岡銅器が作り出したと言われています。
・象嵌
銅で出来た表面を削って、銅以外の金属をはめ込んでいく装飾技法が「象嵌」です。
代表的なものを3つ挙げます。
線象嵌 → 削った線上に金や銀をはめ込む技法
切りはめ象嵌 → 胴表面に穴を開けたら、金や銀をはめ込んでロウ付けする技法
高肉象嵌 → 製品の表面に盛り上がった箇所を作る技法
・着色
着色とは、薬品などを用いて、色を付けていくことです。
薬品によって化学反応させることで、「徳色」「煮色」「青銅色」「焼青銅色」「赤焼色」などの色を生み出します。