【伝統的工芸品のご紹介】~大洲和紙(愛媛県)~

【伝統的工芸品のご紹介】~大洲和紙(愛媛県)~

【名称】

大洲和紙(おおずわし)

 

 

【大洲和紙の産地】

愛媛県喜多郡内子町、西予市など

 

 

【大洲和紙とは?】

愛媛県喜多郡内子町、西予市などで作製されている手すき和紙。

作られ始めたのは平安時代からですが、現在の大洲和紙となったのは江戸時代に入ってからです。

職人の数が減ってしまい、大洲和紙そのものが消滅してしまいそうな危機が一時ありました。

その難局を乗り越え、現在は、高級和紙として不動の地位を得ています。

 

1977年10月、伝統的工芸品に指定されました。

 

 

【大洲和紙の特徴】

特徴は、下記を原料として作製されていることです。

・コウゾ

・ガンピ

・ミツマタ

・竹

・麻

・トロロアオイ

・わら

 

大洲和紙は、書道半紙が最も知られています。

厚さが薄く、すいた部分が波打ったような「すきムラ」が少ないことから、書道半紙として日本全国の書家に支持されるようになりました。

3年ほど経つと、乾燥により水分が飛んだ「枯れた紙」になります。

通常よりも筆あたりが良く、墨色の発色も良くなるので、大洲和紙の持つ独特の趣が表れてきます。

 

また、障子紙は、高級和紙として寺院や住宅の和室に多く利用されています。

 

 

【大洲和紙の歴史】

正確な起源はわかっていませんが、『延喜式』という法典の中に記載があることから、平安時代には既に作製されていたと考えられています。

製紙の解説書である『紙漉重宝記』によると、歌人で名高い柿本人麻呂が、岩見国で紙すきの技術を考え出しました。

そして、その技術が大洲に伝わってきたそうです。

 

1688~1704年頃、現在の大洲和紙になったと伝わっています。

宗昌禅定門という僧を招き、紙すきの技術を指導してもらった結果、藩内産業として繁栄を極めました。

江戸時代の書物で、「大洲半紙の勢ひ天下に独歩せり」と称えられているのが何よりの証拠です。

 

最盛期である1910年に430名いた業者数は、第二次世界大戦後は74名まで減りました。

その後も減り続け、現在に至っています。

しかし、大洲和紙の手すきに誇りを持つ職人たちによって、技術は守り抜かれました。

その方々の尽力により、今もその伝統はしっかりと継承されています。

 

 

【大洲和紙の製作工程】

①原料の煮込

和紙の原料となるコウゾ、ミツマタ、ガンピを、加工できるレベルまで柔らかくする作業です。

原料を数日間、水に浸けて柔らかくします。

その後、ソーダ灰などを加えたら釜に火をかけて煮込んでいきます。

煮込むことによって余計なものが混ざり込むのを防ぎ、ほぐれやすい繊維となるのです。

 

②あく抜き・漂白

 

煮沸で抜け落ちた混じりものなどを除去するため、水洗いします。

その後、水槽の中に入れて、1週間ほど日光に当てながらあく抜きを行います。

あく抜きが完了したら、原料、水、さらし液(水酸化カルシウムの懸濁液と塩素ガスを反応させて作ったもの)を一緒に混ぜたら広げて、漂白します。

なお、漂白していない和紙は、茶系の色です。

 

③叩解

漂白が終わったら、原料に付いた薬品を落とすため水洗いします。

薬品は和紙を劣化させる原因になってしまうので、丁寧に行わなければいけません。

水洗い後にゴミを取り除いたら、繊維をほぐすために叩解を行います。

叩解は人の手ではなく、叩解機という専用の機械を使います。

 

④紙すき

 

まず、原料、ノリ(トロロアオイで作る)、水を「すき舟」に乗せたらよく混ぜ合わせ、紙をすいていく工程です。

 

紙のすき方には、主に「流しすき」「溜めすき」の2つがあります。

大洲和紙は「流しすき」で作製されますが、一般的に行われているのも流しすきです。

流しすきは、すげたに紙料液をすくい、縦横に揺らしながら繊維を絡み合わせる方法です。

和紙の厚みが均一になったら桁からスダレを取り、できた紙を丁寧に重ねていきます。

 

なお、溜めすきとは、紙料液をすげたの上に溜めたら、水分が下に落ちるのを待ってすいていく方法です。

 

⑤圧搾

すき終わった和紙は一晩寝かせ、その後、圧搾機を使って水分を抜いていきます。

圧搾する長さは紙の種類によって決まっており、例えば「障子紙は3時間」「書道半紙は24時間」などです。

 

圧搾の行い方によっては和紙の形を変形させてしまうので、ゆっくりと丁寧に行わなければいけません。

 

⑥乾燥

 

干し板に和紙を張りつけて天日干しする方法、乾燥室を使う方法の2つが主流ですが、大洲和紙は後者で行います。

ステンレス板に1枚ずつ丁寧に張りつけ、シワができないようにハケを用いてさっと伸ばしていきます。

和紙が乾いたら、丁寧にはがします。

スペースが空いたらまた和紙を張って…という作業を繰り返し行い、全ての紙が乾燥したら完了です。

 

⑦選別・裁断

「紙の厚さは均一になっているか」「すきムラはないか」「破れている箇所はないか」「ゴミは付いていないか」など、1枚ずつ確認していきます。

何も問題なければ、商品に合ったサイズで切断して大洲和紙の完成です。

 

工程の所々で、余計なものやゴミの取り除き作業が行われています。

職人たちの手による細かいチェックによって、和紙日本一の品質が支えられているのです。

 

 

 

 

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