【伝統的工芸品のご紹介】~大洲和紙(愛媛県)~
2023.01.16 伝統工芸品について
【名称】
大洲和紙(おおずわし)
【大洲和紙の産地】
愛媛県喜多郡内子町、西予市など
【大洲和紙とは?】
愛媛県喜多郡内子町、西予市などで作製されている手すき和紙。
作られ始めたのは平安時代からですが、現在の大洲和紙となったのは江戸時代に入ってからです。
職人の数が減ってしまい、大洲和紙そのものが消滅してしまいそうな危機が一時ありました。
その難局を乗り越え、現在は、高級和紙として不動の地位を得ています。
1977年10月、伝統的工芸品に指定されました。
【大洲和紙の特徴】
特徴は、下記を原料として作製されていることです。
・コウゾ
・ガンピ
・ミツマタ
・竹
・麻
・トロロアオイ
・わら
大洲和紙は、書道半紙が最も知られています。
厚さが薄く、すいた部分が波打ったような「すきムラ」が少ないことから、書道半紙として日本全国の書家に支持されるようになりました。
3年ほど経つと、乾燥により水分が飛んだ「枯れた紙」になります。
通常よりも筆あたりが良く、墨色の発色も良くなるので、大洲和紙の持つ独特の趣が表れてきます。
また、障子紙は、高級和紙として寺院や住宅の和室に多く利用されています。
【大洲和紙の歴史】
正確な起源はわかっていませんが、『延喜式』という法典の中に記載があることから、平安時代には既に作製されていたと考えられています。
製紙の解説書である『紙漉重宝記』によると、歌人で名高い柿本人麻呂が、岩見国で紙すきの技術を考え出しました。
そして、その技術が大洲に伝わってきたそうです。
1688~1704年頃、現在の大洲和紙になったと伝わっています。
宗昌禅定門という僧を招き、紙すきの技術を指導してもらった結果、藩内産業として繁栄を極めました。
江戸時代の書物で、「大洲半紙の勢ひ天下に独歩せり」と称えられているのが何よりの証拠です。
最盛期である1910年に430名いた業者数は、第二次世界大戦後は74名まで減りました。
その後も減り続け、現在に至っています。
しかし、大洲和紙の手すきに誇りを持つ職人たちによって、技術は守り抜かれました。
その方々の尽力により、今もその伝統はしっかりと継承されています。
【大洲和紙の製作工程】
①原料の煮込
和紙の原料となるコウゾ、ミツマタ、ガンピを、加工できるレベルまで柔らかくする作業です。
原料を数日間、水に浸けて柔らかくします。
その後、ソーダ灰などを加えたら釜に火をかけて煮込んでいきます。
煮込むことによって余計なものが混ざり込むのを防ぎ、ほぐれやすい繊維となるのです。
②あく抜き・漂白
煮沸で抜け落ちた混じりものなどを除去するため、水洗いします。
その後、水槽の中に入れて、1週間ほど日光に当てながらあく抜きを行います。
あく抜きが完了したら、原料、水、さらし液(水酸化カルシウムの懸濁液と塩素ガスを反応させて作ったもの)を一緒に混ぜたら広げて、漂白します。
なお、漂白していない和紙は、茶系の色です。
③叩解
漂白が終わったら、原料に付いた薬品を落とすため水洗いします。
薬品は和紙を劣化させる原因になってしまうので、丁寧に行わなければいけません。
水洗い後にゴミを取り除いたら、繊維をほぐすために叩解を行います。
叩解は人の手ではなく、叩解機という専用の機械を使います。
④紙すき
まず、原料、ノリ(トロロアオイで作る)、水を「すき舟」に乗せたらよく混ぜ合わせ、紙をすいていく工程です。
紙のすき方には、主に「流しすき」「溜めすき」の2つがあります。
大洲和紙は「流しすき」で作製されますが、一般的に行われているのも流しすきです。
流しすきは、すげたに紙料液をすくい、縦横に揺らしながら繊維を絡み合わせる方法です。
和紙の厚みが均一になったら桁からスダレを取り、できた紙を丁寧に重ねていきます。
なお、溜めすきとは、紙料液をすげたの上に溜めたら、水分が下に落ちるのを待ってすいていく方法です。
⑤圧搾
すき終わった和紙は一晩寝かせ、その後、圧搾機を使って水分を抜いていきます。
圧搾する長さは紙の種類によって決まっており、例えば「障子紙は3時間」「書道半紙は24時間」などです。
圧搾の行い方によっては和紙の形を変形させてしまうので、ゆっくりと丁寧に行わなければいけません。
⑥乾燥
干し板に和紙を張りつけて天日干しする方法、乾燥室を使う方法の2つが主流ですが、大洲和紙は後者で行います。
ステンレス板に1枚ずつ丁寧に張りつけ、シワができないようにハケを用いてさっと伸ばしていきます。
和紙が乾いたら、丁寧にはがします。
スペースが空いたらまた和紙を張って…という作業を繰り返し行い、全ての紙が乾燥したら完了です。
⑦選別・裁断
「紙の厚さは均一になっているか」「すきムラはないか」「破れている箇所はないか」「ゴミは付いていないか」など、1枚ずつ確認していきます。
何も問題なければ、商品に合ったサイズで切断して大洲和紙の完成です。
工程の所々で、余計なものやゴミの取り除き作業が行われています。
職人たちの手による細かいチェックによって、和紙日本一の品質が支えられているのです。