【伝統的工芸品のご紹介】~首里織(沖縄県)~
2023.01.18 伝統工芸品について
【名称】
首里織
【首里織の産地】
沖縄本島
【首里織とは?】
沖縄本島で製作されている織物。
首里に伝わっている紋織、絣織物を総称して「首里織」と呼ばれています。
分業制を取らず、職人の手によって一気通貫で製作されるので、少量多品種の生産形態です。
原材料となっているのは、木綿、絹、麻、バショウなどの糸。
また、染料として用いられているのは、琉球藍、フクギ、シブキ、イタジイ、ソウシジュといった植物染料や化学染料です。
14~15世紀頃、琉球王国は元や明などの中国王朝、東南アジア諸国との取引を積極的に行っていました。
そしてモノだけではなく、織物の技術についても自分たちの文化に取り入れていったのです。
1983年4月、伝統的工芸品に指定されました。
【首里織の特徴】
沖縄の地域文化や土地柄に合った、数多くの織物の種類があることが特徴です。
・首里花倉織
最も格式が高い織物で、王家の妃や王女が夏に着ていた。
・首里花織
両面浮花織、緯浮花織、手花織、経浮花織の4種類ある。
(上記画像は、両面浮花織)
・首里道頓織
琉球王朝時代、男性用の官服として使用されていた。
部分的に糸の密度を濃くして織られており、両面使用可能なのが特徴。
・首里絣
首里織独自の「手結」という技法で織られている。
手縞、綾の中、諸取切の3種類ある。
(上記画像は、手縞)
・首里ミンサー
たて糸を2本以上並べて太く織っていく「畝織」と「両面浮花織」を組み合わせた織物。
【首里織の歴史】
14~15世紀頃、中国大陸や東南アジア諸国との取引が盛んに行われており、モノだけではなく織物の技術も取り入れていました。
沖縄独自の文化、気候などの土地柄とうまく融合されることで、先ほどご紹介したさまざまな織物が誕生したのです。
首里は琉球王朝の都(城下町)だったので、王府の貴族などが着る衣服を製作するため、織物技術が発達します。
また、技能だけではなく、色調や優雅さなども追い求められました。
こうして王族などの女性たちにはじまり、現在まで脈々と受け継がれてきているのが首里織です。
動物や植物など自然をデザインに取り入れた絣模様は、沖縄の独自文化である手結い絣の技法によって編み出されました。
沖縄で生まれた琉球絣は、国内にある他の産地にも大きな影響を与えています。
【首里織の製作工程】
先述の通り、首里織には数多くの種類が存在しています。
ここでは、絣の一般的な製作工程を見ていきましょう。
①意匠設計
古来より伝わっているデザイン集などを参考に、色や図柄、製作に必要な糸の量や染料を決めていく工程です。
参考にするデザイン集のひとつに、首里王府の時代から存在する「御絵図帳」があります。
代々受け継がれてきた基本的な模様に現代の感性を加えつつ、意匠設計を行います。
②糸繰り
原料となる糸から混ざりものを取り除き、たて糸を整えます。
その後、のり付けをしてから行うのが糸繰りです。
③整経
これから製作する織物のサイズに合わせて、必要な糸の長さ、本数を整える工程です。
④絣くくり
意匠設計で作ったデザインをもとに、伸ばしたたて糸に印を付けた後、手でくくります。
同時に、よこ糸もデザインを参考にして、絣の長さや本数を決めていきます。
⑤染色
琉球藍、シャリンバイなど、沖縄で採取できる植物を主に染料として用います。
琉球藍は、名前の通り、沖縄県で古くから栽培されています。
藍には防虫や防菌効果があるので、古来より衣服や日用品として使われてきました。
藍染めの場合、藍汁の入った容器に糸を入れたら、糸を手で軽くもみながら染料を染み込ませていきます。
その後、しっかり絞った糸は、陽に当てて十分に乾燥させることが重要です。
染色は狙った色を出すために、何度も繰り返し行わなければいけません。
⑥織りの準備
糸のくくりを解いたら、デザインに合わせて、伸ばしながら張っていきます。
仮おさ通し、糸の巻取り、綜絖(そうこう)通し、本おさ通しの順番で作業を進めていきます。
⑦織り
織り作業は、高機を用います。
手投杼によこ糸をセットしたら、デザインに合わせながら丁寧に織っていきます。
織り作業は、複雑な作業を繰り返し行う必要があり、とても時間と手間を要する工程です。
一流の職人が行っても、日に30平方センチメートル織れるかどうかと言われています。
⑧洗い張り
布が織り上がったら、ぬるま湯で洗い流します。
これは、「たて糸に付けたのりを落とす」「布目をなおす」のが目的です。
洗った後、干して乾燥させたら完成です。