【伝統的工芸品のご紹介】~会津塗(福島県)~
2023.01.19 伝統工芸品について
【名称】
会津塗
【会津塗の産地】
福島県会津若松市など
【会津塗とは?】
福島県の会津地方(会津若松市など)で製作されている漆器。
製造工程の違いによって、「丸物」と「板物」の2つに分類されます。
・丸物
お椀などの丸いもの
・板物
お盆、重箱、文庫(手紙や書類、その他雑品を入れておく手箱)などの四角いもの
また、松竹梅と破魔矢を組み合わせて描かれている縁起の良い模様は「会津絵(松竹梅漆絵)」と呼ばれ、会津塗の代表的なデザインです。
1975年5月、伝統的工芸品に指定されました。
【会津塗の特徴】
松竹梅や破魔矢、鶴亀など、縁起の良い模様。
朱、緑、茶、黄などの色漆の他、金箔を加えるなどの美しい彩色。
この2つが、大きな特徴です。
また、他の漆器と比較すると、微細に浅めに彫ることによって、華やかな装飾ではありますが穏やかな雰囲気を醸し出します。
江戸時代は、黒や朱色、緑といった色が使われることが主でした。
しかし、現代では、深い赤みを帯びているこげ茶、黄色みを帯びた朱色なども使われるようになり、鮮やかな配色も見どころのひとつです。
会津塗の伝統的な上塗り技法として、下記があります。
どの技法も職人たちの熟練した技術が必要です。
・鉄錆塗
生漆に砥の粉を混ぜて作った錆漆を施すことで、まるで鋳物のような重厚感を表現している。
・金虫喰塗
黒漆を塗った後、もみ殻を全面に蒔きつける。
乾燥後、もみ殻を取り除くことで凹凸模様が表面にできるので、そこに金箔などを巻く技法。
ひとつとして同じ模様ができないのが特徴。
・木地呂塗
透き漆を塗ることで、木目の美しさを最大限に引き出す技法。
・花塗
油を加えて光沢を持たせた漆で上塗りをしていく技法。
加飾の技法としては、「消粉蒔絵」が代表的です。
金箔や銀箔を水あめと混ぜて乾燥させたら、揉んで細かい粉末にし、蒔きつけます。
【会津塗の歴史】
会津塗の起源は、今から約430年前の1590年、蒲生氏郷が会津の領地に入ってきたところから始まりました。
蒲生氏郷は、近江国から優れた木地師と塗師を招き入れ、漆器づくりの基礎や当時の最先端技術を会津に定着させたのです。
その結果、製作に必要な漆の栽培から上塗り、蒔絵と、完成までの工程をすべて行える産地として大きく発展しました。
江戸時代に入り、会津塗は藩によって保護・奨励されます。
また、職人たちが積極的に新しい技術を取り入れることで進歩し続け、幕末にはオランダや中国などの外国向けに輸出されるようになりました。
会津は、戊辰戦争によって焼け野原になってしまいますが、その後再興します。
明治時代の中期には、日本屈指の漆器産地として、再びその名をとどろかせるようになったのです。
現在では、ペンダントやイヤリング、フロアスタンドなどのインテリア用品、車の内外装まで、幅広い分野で会津塗の技法が活用されています。
会津漆器に携わる人々の努力によって、その時代に合った進化をし続けています。
【会津塗の製作工程】
①荒挽き
会津塗は、製作物によって使う素材が下記のように変わります。
・丸物
ケヤキやトチノキなど
・板物
ホオノキやケヤキなど
おおまかなサイズに木を切断した後、数年間、自然乾燥させます。
②木地作り
十分に乾燥させた木材を、削り上げていく工程です。
・丸物
ろくろ挽きによって丸物の木地を作る職人は、木地師と呼ばれます。
明治時代に会津で開発された「鈴木ろくろ」を使うことで、効率的に仕上げていくことが可能になりました。
・板物
板物の木地を作る職人は、惣輪師と呼ばれます。
惣輪師の伝統は、会津が日本全国で一番古いそうです。
カンナやノコギリなど、何種類もの工具を使い分けて製作します。
③下地
生漆に砥の粉を混ぜて作った錆漆を下地に塗ったら、平らかつ滑らかな状態に仕上げます。
その後、表面の凹凸をなくすために丁寧に研いでいく工程です。
④塗り
塗りは、「下塗り」「中塗り」「上塗り」の3種類あります。
「下塗り」「中塗り」は、漆を塗ってから研磨します。
表面に傷などないか確認した後、上塗りを行うという順番です。
上塗りの技法としては、前述した4つの代表的な方法があります。
⑤蒔絵
蒔絵とは、漆で表面に絵を描いた後、金粉・銀粉や色粉(顔料などを粉末にしたもの)を蒔きつける技法です。