【伝統的工芸品のご紹介】~別府竹細工(大分県)~
2023.01.30 伝統工芸品について
【名称】
別府竹細工
【別府竹細工の産地】
大分県別府市
【別府竹細工とは?】
大分県別府市を中心とした地域で製作されていて、大分県内で採れたマダケが主な材料である細工物です。
草花を摘み入れる「花かご」、炊いたごはんを腐らせないように保存しておく「飯かご」、はし、ざるなどの日用品だけでなく、かごバッグやランチバスケットなど、時代に合わせた新製品の開発も積極的に行っています。
また、別府市の旅館では、内装やパーテーションなどが職人の手によって製作されて脚光を浴びました。
卓越した技術による別府竹細工の製品は、国内だけではなく、世界各国にも数多くのファンがいます。
1979年8月、伝統的工芸品に指定されました。
なお、大分県で唯一の伝統的工芸品です。
【別府竹細工の特徴】
竹ひごを編む方法を「編組」と言い、すべて職人による手作りであることが大きな特徴です。
なお、基本となる8つの編組は以下の通りです。
複数の編組を駆使しながら製作することによって、200種類以上の編み方を表現できると言われています。
・四つ目編み
太さが等しい平らな竹ひごを、交差させるように組んでいく技法。
名前の由来は、等しい間隔で四角い目ができるから。
・六つ目編み
6本の竹ひごを、編み目が六角形になるように組んでいく方法。
斜めの編みが加わるので、四つ目編みと比較して頑丈になる。
・八つ目編み
編み目が八角形になるように組んでいく方法。
・網代編み
太めの平らな竹ひごを使い、すき間なく組んでいく方法。
・ござ目編み
縦に太い竹ひご、横にそれよりも細い竹ひごを使い、すき間なく組んでいく方法。
少し細い分、横ひごのほうが多くなるので、ござの様にみえることが名前の由来。
・松葉編み
編み目を交錯させて、松葉に見えるように編んでいく方法。
・菊底編み
円形になっている底を、菊の花に似た形に編んでいく方法。
・輪弧編み
四方八方に広がるような形に竹ひごを組んで、中央に輪ができるように編んでいく方法。
【別府竹細工の歴史】
別府竹細工の起源について記載されているのが、歴史書『日本書紀』です。
景行天皇が熊襲征伐の帰りに別府に立ち寄った際、天皇の食膳に奉仕していた者が、シノダケで茶碗かごを作ったことが始まりであると伝わっています。
室町時代、行商(商品を持って一軒ずつ訪ね、販売していく商人)向けにかごが作られ、竹細工が一般的なものになりました。
江戸時代になると、別府は日本有数の温泉地として、広く名が知れ渡る存在になります。
全国から温泉療養で別府に訪れる人々が増え、日用品やお土産として買われていくようになりました。
その結果、竹細工は別府を支える重要な産業として、発展・定着していきます。
1902年、別府工業徒弟学校(現在の大分工業高校)が創立されます。
多くの優れた職人を輩出することになり、日用品・土産物から、芸術的要素を兼ね備えた工芸品へと変化していきました。
日本が高度成長期に入ると、値段の安いプラスチック製品が数多く出回るようになり、竹製品の需要は次第に減少していきます。
危機的な状況の中、別府竹細工は、高級製品へシフトを移したのです。
その結果、技術的な発展だけではなく、芸術性の高い作品を手掛ける職人たちが多く出てきました。
そして1967年、現在の別府市で生まれた生野祥雲斎が、竹工芸では初となる人間国宝に認定されます。
時代に合った姿に変えられる柔軟性を持ちながら、現在も別府竹細工の伝統は脈々と受け継がれています。
【別府竹細工の製作工程】
①伐採・油抜き
伐採するのは、3~4年ほどかけて成長した質の高い竹です。
なお、秋または冬に伐採を行うのが良いと言われています。
成長スピードが遅い時期なので水分や養分が少なく、伐採後の腐食などを防ぎやすいからです。
伐採後、苛性ソーダを入れてアルカリ性にした水の中で、煮沸させます。
煮沸によって染み出してきた油分をふき取る、「油抜き」を行います。
油抜きを行う理由は3つあり、「腐り防止」「耐久力のUP」「竹の表面のツヤ出し」です。
②天日乾燥
天日乾燥することで、竹が緑色から美しいアイボリーへと変化します。
なお、天日乾燥させた竹のことを「晒竹」と言います。
生産者は晒竹を購入し、竹細工製品を作ります。
③切断加工・荒割り
乾燥させた竹を、専用の道具を用いて適切な長さに切断します。
まず、盛り上がった部分を削って平らにしてから、竹割包丁を用いて半分に割ります。
竹は繊維に沿って包丁を入れると、スパッとキレイに割ることが可能です。
その半分を、さらに縦に割っていく「荒割り」をくり返し行います。
④剥ぎ
かごやザルを編むときに用いる、竹ひごを作るための工程です。
荒割りした竹を「荒剥ぎ → 小割り → 薄剥ぎ」の順番で薄くしていき、後工程で使う竹ひごの厚さを整えていきます。
熟練した職人は、手の感覚だけで竹ひごの厚さを判断できるようになるそうです。
⑤ヒゴの仕上げ
「すき銑」と呼ばれる専用の道具を用いて、竹ひごの厚さをそろえます。
次に、幅をそろえるため、2本の幅取り小刀の間に竹を通します。
専用の刀を用いて面を取り、竹細工を製作しやすい竹ひごにできたら、この工程は完了です。
⑥底編み
この工程から、いよいよ竹細工の製作へと移ります。
まずは底の部分から編んでいきますが、底編みが一番難しく、高い技術を要します。
この工程が難しい理由は、平らになっている底を立体にするため、竹ひごを熱しながら徐々に立ち上げなければいけないからです。
この作業を「腰の立ち上がり」と言います。
⑦胴編み・首編み
立ち上げた竹ひごを、先述のさまざまな編組を駆使しながら、編み上げていく工程です。
⑧縁仕上げ・取り付け仕上げ
編み上げた後に行うのが「縁仕上げ」です。
縁仕上げの代表的な方法は、以下になります。
・共縁
ここまで編み上げてきた竹ひごを、そのまま縁にする方法
・当て縁
縁にする竹を、針金などを用いて固定する方法
・巻縁
藤などを巻く方法
作品によって、取手を取り付ける場合があります。
⑨塗装加工
編み工程が完了した竹細工は、染料を入れた鍋で煮沸し、下地染めされます。
染色の有無を含めてさまざまな種類があり、主なものは下記の通りです。
・青物
染色せず、青竹のままで作られた竹細工
・白物
油抜が完了している竹細工
・黒物
漆塗りをする竹細工
下地染めを行った竹細工は、乾燥させた後、布で磨きます。
力強く磨いてしまうと竹に傷がつき、さらにツヤも失われてしまいます。
全体が均一に磨かれるように、力加減に注意しなければいけません。
最後、必要があれば装飾を施し、別府竹細工の完成です。