【伝統的工芸品のご紹介】~久米島紬(沖縄県)~

【伝統的工芸品のご紹介】~久米島紬(沖縄県)~

【名称】

久米島紬

 

 

【久米島紬の産地】

沖縄県久米島町

 

 

【久米島紬とは?】

沖縄県久米島町で製作されている織物。

久米島は、日本の紬の発祥の地と言われています。

完成までに「デザインの選び定め」「染色に必要な原料の採取」「糸の染色」「織り作業」といったさまざまな作業がありますが、すべて1人の職人の手によって行われます。

 

1975年2月、伝統的工芸品に指定されました。

 

 

【久米島紬の特徴】

主な特徴は、「手触りや肌触りの良さ」「豊かな色彩」「ひとりの職人による一気通貫の手作業」です。

 

素材となる糸の種類は、以下の2つです。

 

・紬糸

生糸にならない不良なまゆを、真綿(まゆを煮たものを引き伸ばして綿にしたもの)のような状態にして、よりをかけた後に、人の手によってつむいだ糸

 

・引き糸

まゆから取り出したまま何も手を加えてない糸を、引き出したもの

 

沖縄県内に自然に育っている植物を利用し、「泥染め」「草木染め」などの方法で染めつけます。

天然の染料を使う理由は、製作工程にある染色作業のためではありません。

完成した久米島紬をご購入いただいたお客様のためです。

天然の染料を使って織った商品は、洗う度にアクが抜けていくので、徐々に鮮やかな色彩になっていくのです。

 

色を付けた糸、付けない糸の両方を用いて織り上げた柄を「絣模様」と言います。

色を付けない箇所には、前もって木綿の糸を巻きつけておく「絣くくり」という作業が必要です。

とても細やかで気力を使う工程ですが、久米島紬では、職人によって手作業で行われます。

なお、一般的には、専用の機械でくくり作業が行われることがほとんどです。

 

 

【久米島紬の歴史】

首里王府によって編さんされた『琉球国由来記』によれば、久米島紬の起源は、今から600年以上前の14世紀末まで遡ります。

久米島の人が中国大陸(当時は明)に渡り、養蚕などに必要な知識・技術を持ち帰りました。

 

1511年、久米島は琉球王国の統治下になり、紬を税として納め始めます。

1609年、薩摩藩が琉球王国に軍事行動を起こしたことで、課される税がより重くなりました。

より高品質の紬を納めさせるため、王府は越前から宗味入道を招き、クワの栽培・養蚕・真綿の作り方など、必要な技術を伝授させます。

 

1632年、薩摩出身で八丈織りに精通していた友寄景友が来島しました。

彼から紬の織り方、糸の染め方が伝えられたことで、技術的に大きな進歩を遂げます。

そして、参勤交代を通じて、久米島紬(当時は琉球紬)の名は江戸まで知れ渡るようになったのです。

 

1903年に税制が変更されるまで、税として納めるための生産が続きます。

その2年後、地場に根づいた産業として、発展の道を歩めるようになりました。

 

 

【久米島紬の製作工程】

①糸紡ぎ

アルカリ性の水溶液の中にまゆを入れたら、じっくり煮て柔らかくしていきます。

その後、たて糸・よこ糸を、以下の手順で準備します。

 

たて糸

・ぬるい湯にまゆを浮かべたら、裏返して手にかぶせる。

・厚さにムラが出ないように引き伸ばして、角真綿にする。

・角真綿をほぐしながら糸を引き出して、軽くよりをかけながら小管に糸を巻きつけていく。

 

よこ糸

・まゆから糸を引き出したら、一本の糸にする。

・座繰り機と呼ばれる糸を巻いていく道具を用いて、縦の方向によりをかけながら、小管に糸を巻きつけていく。

 

②デザイン設計

 

「御絵図帳」などを参考にしながら、デザインを決定します。

御絵図帳は、琉球王府の絵図奉行が作成した図案集(600種ほど)で、模様だけではなく染色の仕方なども細かく指定されているのが特徴です。

植物や動物、日用品などをモチーフにした模様があります。

 

③絣くくり

 

久米島紬は、染色した糸と染色していない糸を使い分けて製作します。

使用する糸を「絣糸」といい、事前に染め分けておきます。

絣くくりの手順は、以下の通りです。

 

・たて糸にでんぷんでノリ付けし、木枠などに巻き取っていく「糸繰り」を行う。

・定められた長さに切断し、製作に必要な本数をそろえる「整経」を行う。

・染めない箇所には炭で目印を付けておき、ビニールで覆ったら、綿糸でくくる。

 

デザイン通りに製作するためには、目印の位置、くくる位置を正確に行わなければいけません。

また、くくる際の強さも重要です。

例えば、強すぎてしまうと色の境目がハッキリしすぎてしまい、久米島紬独特のやわらかい美しさが表現できなくなります。

デザイン通りの模様をキレイに出すため、正確さだけではなく、粘り強さも必要な工程です。

 

④種糸取り

 

種糸とは、絣の位置を決める元の糸のことです。

以下の手順で行います。

 

・木綿糸にノリ付けし、絵図台にかける。

・デザインに沿って入念に墨を付けたら、種糸を作る。

・よこ糸は、糸繰り後、種糸の長さに整経する。

・種糸をよこ糸に従って張ったら、目印を付けた箇所をくくる。

 

⑤染色

久米島紬の特徴として、染色で使うのは、沖縄県内に自生している植物のみであることが挙げられます。

また、染色は9月頃から始めます。

湿度が低くなり、日差しもやわらかになってくるからです。

 

代表的な色として、赤茶色、黄色、ウグイス色、すす竹色、銀鼠(銀色がかった明るめの灰色)などがあります。

色は、「原料となる植物」と「媒染に用いる原料」によって変わります。

なお、媒染とは、植物の持つ色素を糸に発色・定着させる工程のことです。

 

⑥仮筬通し・巻き取り

 

「筬」とは、たて糸の間隔をあけて揃えて、よこ糸を所定の位置に押し詰め、織り目を整えるために用いるクシに似た道具です。

また、地糸は糸繰り後に整経します。

 

デザイン通りに絣模様が表現できるように、絣糸と地糸を割りふり、仮筬の一目に地糸を2本ずつ通します。

たて糸は、クシでとかして固めに巻き取ります。

 

⑦絣解き

 

たて糸は、くくった木綿糸をほどき、ノリを付けたら引っ張ります。

よこ糸は、1本ずつ分けたら、地糸と一緒に小管に巻いたら織機に取りつけます。

 

⑧織り

 

仮筬に通してある2本の地糸の間にたて糸を通すなどの準備が完了したら、いよいよ織り工程です。

手織り機の一種である「高織」を用います。

 

シャトルを左右に手で投げてよこ糸を通して、筬を打ち込んでいく「手投げ杼」という伝統的な手法で行います。

 

⑨砧打ち

 

織り工程が完了したら、同じ幅で折り返しながら重ねてたたんでいきます。

その後、30℃程のぬるま湯で洗ったら、天日干しを行います。

 

ほぼ乾燥したら織り目を整えて、再び同じ幅で折り返しながら重ねてたたんでいきます。

そして木綿で包んだら、「砧打ち」を行います。

砧打ちとは、2人で杵や木づちを持ち、数百回も反物を叩き続ける技法のことです。

これを行うことで、紬に光沢や渋めな色合いが出てくるので、とても大切な作業になります。

 

最後、天日干しで乾燥させたら、シワを伸ばして仕上げ完了です。

 

 

 

 

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