【伝統的工芸品のご紹介】~房州うちわ(千葉県)~
2023.02.2 伝統工芸品について
【名称】
房州うちわ
【房州うちわの産地】
千葉県館山市、南房総市
【房州うちわとは?】
千葉県館山市、南房総市などで製作されているうちわ。
「日本三大うちわ」のひとつとして有名です。
(他ふたつは、香川県の丸亀うちわ、京都の京うちわ)
昔は、浮世絵や美人画などの伝統的なデザインが多く描かれていました。
しかし、近年は、動植物や風景が描かれたり、漁師の晴れ着である万祝や浴衣の生地が貼られたり、さまざまな種類のうちわが増えています。
2003年3月、伝統的工芸品に指定されました。
※丸亀うちわの詳細については、こちらの記事をご覧ください。
【房州うちわの特徴】
大きな特徴は、「材料が女竹」「柄の部分が丸い」という2つです。
・女竹
幹が細くて、節と節の間が長い竹を「女竹」といいます。
房州地域で育ち、10~1月の寒くて乾燥している時期に採取した竹を材料として使用します。
・丸柄
直径が1.5cm程の竹を64等分に割いて骨を作ったら、糸を用いて骨を交互に編み、扇形に形作ったものを「丸柄」といいます。
半円で美しい格子模様の「窓」が特徴的です。
【房州うちわの歴史】
房州うちわの起源には、2つの説があります。
・説①
千葉県が1911年に出版した「地方資料小鑑」に記載されていて、1877年に那古町で作り始められたという説。
・説②
千葉県が1918年に出版した「房総町村と人物」に記載されていて、1884年に那古町の岩城惣五郎が、うちわ骨の製作を始めたのが最初であるという説。
タイミングは違えど、現在の館山市那古が起源であることは間違いなさそうです。
明治~大正時代には、房州でうちわ骨を製作し、東京で「江戸うちわ」まで作り上げられていました。
1921年、横山寅吉(うちわ問屋・松根屋の当主)が、千葉県の船形に工場を建てます。
この工場で、うちわの生産を一気通貫で行うようになったのが、房州うちわの始まりです。
扇風機やエアコンの普及により、房州うちわの生産は減少の一途を辿ります。
昭和初期に年間700~800万本あった生産量は、現在、20~30万本になりました。
【房州うちわの製作工程】
①竹の切出し
材料となる女竹の採取は、毎年10~1月頃に行います。
「中身が締まっている」「太さが一定である」など、素材に最適な女竹を見つけたら伐採し、うちわ製作に合った長さに切断します。
②皮むき
竹皮をはがす工程です。
もし、節の周辺に芽などがあれば、取りのぞきます。
③磨き
もみ殻と一緒にして水で洗います。
表面を磨いたら、もみ殻を落とした後に乾燥させます。
④水付け
8つの切目を竹に入れます。
切目を入れた部分を下にしながら、ひと晩水に浸けて竹を柔らかくします。
⑤割竹
竹を徐々に分割していく工程で、下記手順で行います。
・節から少し離れた上部に、糸を巻きつけて固定する
・事前に入れてある切目から、糸の位置まで割いて8分割する
・余計な部分を削ぎ落とす
・16 → 32 → 64分割と、徐々に竹を細くしていく
⑥もみ
分割し終えた竹を3~4本まとめたら、コンクリートなどの上で強めに転がします。
この作業を行うことで、骨の角をなめらかにします。
⑦穴あけ
節の下に、ドリルで穴をあけます。
竹が割れないように、細心の注意を払って行わなければいけません。
穴は、編み棒を通すために使います。
⑧編竹
竹を編んでいく方法は、2種類あります。
2本ずつ編む方法よりも、1本ずつ編む方が、美しい出来栄えとなります。
分割部分の10cmほど上に糸を結び付けたら、一直線になるように、骨と糸を交互に編んでいく工程です。
⑨柄詰め
うちわを持つのに丁度いい長さに柄を切断します。
その後、柄の中は空洞になっているので、細くした柳の枝を詰め込んでいきます。
⑩弓削
うちわの「弓」を作る工程で、下記手順で行います。
・マダケを割いて細くする
・割いた竹の両端を、細く削ぐ
・形を整える
弓が完成したら、編んである竹に取りつけます。
⑪下窓
竹同士のすき間が等しくなるように、扇型に広げます。
その後、⑧で編んだ糸を、弓の両端に仮結びします。
⑫窓作り
うちわの骨の動きを止めておくように、糸を引き締めます。
弓を反らせたら、骨の両端と弓を糸でしっかり結びます。
⑬目拾い
糸から少し離れた上部の骨の間に竹を差し込んで、反対側に広がってしまった骨を平らにします。
⑭穂狩り
キレイなうちわの形にするため、骨の余計な部分を切断していきます。
この作業は、断裁機など専用の道具を用いて行われます。
後工程で最終的な仕上げを行うので、作業の邪魔になる部分だけ切ります。
⑮焼き
骨の形をまっすぐのまま保たせるため、中心部をコンロなどで熱します。
この作業で骨組みを安定させ、竹ひごを外したら「うちわ骨」の完成です。
⑯貼り
紙または布を、骨に貼っていく工程です。
骨の全体にノリを塗ったら、まずは表面から貼ります。
骨同士のすき間が均等になるように、ヘラを使って全体の形を整えていきます。
表面が完了したら、裏面も同様に行います。
⑰断裁
断裁機などの道具を用いて、うちわの形に合わせるために骨の端を切断し、そろえていきます。
⑱へり付け
うちわの面の周りを、細長く切った和紙を貼って縁取る工程です。
⑲下塗り
持ち手の端の部分を、柄尻といいます。
すき間があいているので、ニカワと胡粉(貝殻から作られる白色の顔料)を混ぜ合わせた液体を塗ります。
先端を丸く盛り上げたら完了です。
⑳上塗り
乾燥させた後、漆または顔料で、柄尻に彩色します。
㉑仕上げ
一本ずつプレス機に通して、骨の形が浮き出てくるように整えたら、房州うちわの完成です。