【伝統的工芸品のご紹介】~飛騨春慶(岐阜県)~

【伝統的工芸品のご紹介】~飛騨春慶(岐阜県)~

【名称】

飛騨春慶

 

 

【飛騨春慶の産地】

岐阜県高山市

 

 

【飛騨春慶とは?】

岐阜県高山市とその周辺地域で製作されている漆器。

瀬戸焼の祖とされている加藤景正が作った茶器の名作「飛春慶」に、初期の作品の色合いが似ていました。

これが「春慶」という名前の由来であると伝わっています。

 

盆や皿、花器などの生活用品だけでなく、名刺ケースや時計、アクセサリーなど、さまざまな種類の作品が作られています。

使い続けるほどに光沢のある色合いが出てくるため、実用性の中に美しさを表現していると言えるでしょう。

 

1975年2月、伝統的工芸品に指定されました。

 

 

【飛騨春慶の特徴】

7~8月に採った漆は最も品質が良いので「盛物」と言われ、その生漆から水分を除いて透明度を増した漆を「透漆」と呼びます。

飛騨春慶は、透漆を塗ることで透き通った色合いを表現しています。

また、木目を活かした自然を感じる美しさも特徴のひとつです。

 

なお、透漆は塗師がそれぞれ独自の方法で作るので、ふたつとして同じ透漆は存在しません。

塗師ごとの作品を見比べてみると、より飛騨春慶を楽しむことができるでしょう。

 

 

【飛騨春慶の歴史】

1600年代の初め、大工の親方であった高橋喜左衛門がサワラの木目の優美さに魅了され、盆の製作を行いました。

その盆を金森宗和(飛騨高山城主の長男)に献上したところ大変に喜び、春慶塗の祖・成田三右衛門に塗り上げさせたのです。

これが、飛騨春慶の起源であると伝えられています。

なお、作られた盆は、将軍家に献上されたそうです。

 

木目の自然な美しさを活かす作風は、茶道具として広く用いられるようになります。

その後、料理を詰める重箱などの日常生活で使用されるものが、数多く製作されるようになりました。

 

明治時代になり、セントルイス万国博覧会に出品すると、銀賞を受賞。

世界にも名を知られる存在となっていきます。

 

戦時中に漆の入手が難しくなり、一時、産業として衰退してしまう時期もありました。

しかし、高度経済成長期には贈り物として重宝され、最近ではお土産や記念品としての需要も高まってきています。

 

 

【飛騨春慶の製作工程】

①原木

材料となるのは、サワラ、ヒノキ、トチなどです。

5~6年かけて自然乾燥させた後、木工品を加工・製造する職人である木地師によって、生地に仕上げます。

屋外に積んで乾燥させたら製材場所に運搬し、板に加工します。

 

②天然乾燥

加工した板を積み上げ、乾燥させます。

その後、倉庫内でさらに乾燥させていきます。

 

③製材・木取り

製作する品に合わせて、板を切断する工程です。

 

④木地製作

製作する品の種類によって、下記専門の職人がそれぞれの木地を作ります。

 

枇目師

中心からずらして切断した時、表面に現れる木目の「板目」を枇目にします。

枇目とは、板を裂いた際に、裂いた面に自然にできる線条の凹凸のことです。

枇目にした部品を作ったら、ニカワで接着させて組み合わせていき、重箱や盆などにします。

 

・曲物師

曲物師とは、丸盆などの曲げ物を作る木地師のことです。

蒸したり煮て柔らかくした板を曲げて、茶葉を入れておく茶筒などの丸い製品を作ります。

専用の道具を用いて丸い形を作ったら、両端をニカワで接着させます。

さらに、ヤマザクラの皮で、外れないように補強します。

 

・挽物師

丸盆や菓子入れなど、丸型のものを作る技法です。

木材をろくろに取りつけたら回転させ、刃物で削ったりくり抜いて形作っていきます。

 

⑤目止め

木地が完成したら、次は塗師による工程です。

木地の表面を均一にするため、最も大切な作業であると言われています。

下記手順で行います。

 

・木地を磨く

・砥の粉と水を練り合わせたものを塗る

・布でふき取っていく

 

⑥着色

黄色あるいは紅の染料を用いて、彩色します。

 

⑦下塗り

 

漆が直接染み込むことを防ぐため、豆汁を複数回塗り、表面に薄い膜を作ります。

豆汁とは、大豆を水に浸した後にすりつぶして、こして出した液体です。

 

⑧仕上げ磨き

表面をサンドペーパーなどで磨く工程です。

 

⑨すり漆

 

以下の手順で行います。

 

・生漆とえごま油を混ぜ合わせた液体を作る

・その液体を木地に磨りこむように塗った後、布でふき取って漆を染み込ませていく

・「塗る → ふき取る」の作業を繰り返し行う

 

すり漆の工程を行うことで、液体が固く透き通るようになり、木目の浮かぶ様子が変化してきます。

 

⑩上塗り

 

透明な漆を塗って、仕上げていく工程です。

ホコリなどが付着してはいけないので、細心の注意を払って行わなければいけません。

 

この工程で塗る漆は、塗師が独自の方法で作るものです。

漆は「温度が24~28℃」「湿度70~85%」の環境下で、硬化しやすくなります。

上塗り作業を行う季節、その日の温度や湿度によって、作業に最適な漆を用います。

 

⑪乾燥

乾燥に適した条件に保った乾燥室に入れて、乾燥させたら完成です。

 

 

 

 

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