【伝統的工芸品のご紹介】~因州和紙(鳥取県)~

【伝統的工芸品のご紹介】~因州和紙(鳥取県)~

【名称】

因州和紙

 

 

【因州和紙の産地】

鳥取県東部(旧国名が「因幡の国」で、因州と呼ぶこともある)

 

 

【因州和紙とは?】

鳥取県東部で作られている手漉き和紙。

書道や絵画に使われる用紙が有名で、生産量は全国シェアの約50%を占めていて日本一です。

 

因幡の国では、「コウゾ」「ミツマタ」「ガンピ」といった和紙の原料が豊富に採取できました。

また、高品質な紙を作るために必要な清流に恵まれたことも、和紙の生産地として発展した要因といえるでしょう。

 

1975年5月、和紙では初の伝統的工芸品に指定されました。

 

 

【因州和紙の特徴】

大きな特徴は、書き心地の良さです。

「他の和紙で一枚書いているうちに、二枚書けてしまう」「滑らかでスッと書けるから、墨の減りも少ない」と言われており、「因州筆切れず」という言葉まであります。

ちなみに、この言葉には「どれだけ書いても筆が傷みづらい」「墨がかすれにくいので長く書ける」という2つの意味が込められているのです。

こうしたことから、数多くの書道家たちに重宝されています。

 

また、因州和紙は天然の繊維を活かして作られているので、頑丈であり、酸化にも強いです。

この実用性の高さも、因州和紙の特徴であるといえるでしょう。

 

紙漉きには「流し漉き」「溜め漉き」の2つの方法がありますが、因州和紙は前者で作られます。

くみ取った繊維を、何度も揺り動かしながら紙を漉き上げていきます。

その時の「チャッポンチャッポン」という伝統的な音は、環境省による「残したい日本の音風景100選」にも選ばれています。

 

現在では、伝統技術を活かして、小型の行灯や照明などのインテリア、ピアスなどのアクセサリーも製作されています。

古来の伝統を大切にするだけではなく、時代に合った製品の開発にも積極的に取り組んでいることも特徴です。

 

 

【因州和紙の歴史】

因州和紙の起源については諸説ありますが、最も古いものと言われているのが奈良県の正倉院で保管されています。

正倉院文書の「正集」の中に、因幡国と記載があり、因幡の国印が押されているものです。

これは700年代前半のものなので、1300年近くの歴史があることになります。

 

また、927年に編纂された法典である「延喜式」に、因幡の国が朝廷に紙を献上していたことが記載されています。

 

江戸時代に入ると、因幡鹿野藩の初代藩主・亀井茲矩が、コウゾとガンピを含めた11種の木について「領地内で切ってはいけない」という命令を出しました。

因州和紙の大切な原料であり、鳥取藩に納める御用紙、一般的に使われる紙などの生産が盛んに行われていたからです。

 

紙の漂白技術の進歩、効率的な製作方法の導入などにより、明治時代から大正時代の終わり頃まで生産量が拡大しました。

 

昭和時代に洋紙が普及したことで、和紙の需要は減少し続けます。

しかし、因州和紙は伝統に縛られることなく、新製品の開発を積極的に行ったのです。

書画に用いる紙で全国一位のシェアを誇るなど、現在も多くの人を魅了しています。

 

 

【因州和紙の製作工程】

①原料

 

因州和紙の主な原料は、「コウゾ」「ミツマタ」「ガンピ」です。

使用する原料を選んだら、水に浸けて繊維を柔らかくします。

チリやゴミなどの不要なものを洗い落とした後、表面にある黒皮を取りのぞきます。

 

②煮る

 

皮にはまだ和紙製作に不要な物質も含まれているので、煮ることによって、和紙に必要な繊維素だけを取り出していきます。

 

手順は、以下の通りです。

・再び水に浸けて、柔らかくする

・釜に入れた水に苛性ソーダなどを混ぜてアルカリ性にし、ワラや麻などと一緒に煮る

 

煮る時間は原料などによって変えますが、コウゾの場合は2~3時間です。

 

③水洗い、晒し

 

煮た原料を水洗いし、不要物や薬品などを取りのぞいて繊維素だけにします。

その後、清流でゴミやチリなどを洗い流します。

最後、不要なものを手作業で念入りに取り除いたら完了です。

 

④叩き

 

叩きは、束になっている繊維を棒で叩いてほぐす工程です。

叩き作業をしっかり行うことによって、紙漉き時に繊維同士が絡み合い、強度の高い和紙を作ることが可能になります。

 

なお、手作業の他に打解機を用いる場合もあります。

 

⑤紙漉き

 

紙漉きには、「漉き舟」「すけた」という道具を使います。

 

叩き作業をした繊維を水に溶かして「紙料」を作ったら、混じりものを取りのぞきます。

その後、トロロアオイの根から採取した粘り気のある透明な液体を加えます。

 

漉き舟に水と紙料を入れたら、すけたで汲み上げます。

紙の厚さが等しくなるように、上下左右に揺らしながら繊維を絡めていきます。

この作業を何度も繰り返し行い、狙った厚さになるまで紙を重ねていく方法が「流し漉き」です。

 

⑥脱水

 

漉いた紙は湿っているので、水分を取りのぞく工程です。

形が崩れないよう丁寧に紙を数百枚重ねたら、ゆっくりと力を加えて圧搾します。

十分に水分が取りのぞけたら完了です。

 

⑦乾燥

 

脱水が完了した紙を一枚ずつ慎重にはがしたら、干板に張りつけて乾燥(天日干し、乾燥室)させます。

この時、シワやすき間ができないように、ハケを使用します。

 

⑧裁断

 

乾燥した紙は、穴あきなどの不良がないかチェックします。

良質な紙のみ集めたら、製作する紙の種類に応じて裁断します。

 

裁断方法は2つあります。

・裁断包丁・切り板・定規の3つで行う伝統的な「手裁ち」

・機械による裁断

 

 

 

 

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