【伝統的工芸品のご紹介】~阿波正藍しじら織(徳島県)~
2023.02.17 伝統工芸品について
【名称】
阿波正藍しじら織
【阿波正藍しじら織の産地】
徳島県徳島市
【阿波正藍しじら織とは?】
徳島県徳島市で製作されている綿糸の織物。
18世紀から、阿波では「張った経糸」と「ゆるませた経糸」を交互に配置することで、独特のシワ模様であるシボを出す織物(=しじら織)を作っていました。
このしじら織を阿波藍で染めたものが、阿波正藍しじら織です。
1978年7月、伝統的工芸品に指定されました。
※「しじら」とは、経糸と緯糸のどちらかを縮まらせることで、織物の表面に現れる縮みじわ。
【阿波正藍しじら織の特徴】
特徴は、織物の表面上にある凹凸状のシワである「シボ」です。
シボがあることによって肌合いが良くなり、汗をかいてもべたつきません。
暑い季節でも快適に着て過ごせるので、衣料品として人気があります。
日本を代表する色として「ジャパンブルー」と世界で呼ばれている藍色は、昔から着物や浴衣などで多く採用されてきました。
最近ではシャツやネクタイなどの衣料品だけでなく、タペストリーやランチョンマットなどのインテリア商品も作られています。
日常生活で気軽に使える商品の登場により、使い心地の良さや色彩の美しさに魅了される人たちが増えています。
【阿波正藍しじら織の歴史】
阿波正藍しじら織の誕生年は、1866年。
当時の阿波国・安宅村に在住していた海部ハナさんによって、しじら織の技法が偶然発見されたことがきっかけです。
阿波国でとても人気のあった「たたえ縞」という木綿の織物を、ハナさんは干していました。
雨が降ってしまい、濡れた生地が縮んでしまいます。
しかし、濡れた生地の表面にできたステキな凹凸状の風合いに、ハナさんの目は奪われました。
そして、シボのある織物を意図して作ることを思いついたのです。
アイデアを形にするため、ハナさんは研究に没頭し、試行錯誤を重ねます。
努力の末、経糸の張り具合を調整することでシボを作る技法が完成。
「安くて・軽くて・涼しい」という三拍子揃ったしじら織は、阿波国内に一気に広まりました。
また、徳島藩主・蜂須賀氏によって阿波国の藍栽培が勧奨されていたこともあり、吉野川沿いで阿波藍の栽培が活発に行われていました。
明治時代まで、阿波で作られる藍の生産量は全国シェアの25%ほどを占めていましたし、染料としての品質も高かったのです。
自然と、しじら織にも阿波藍が使われるようになりました。
「しじら織の発明」「阿波藍の盛んな栽培」という偶然もあり、カジュアル衣料として親しまれてきたのです。
現在でも徳島県の誇る伝統産業として、その地位は確立されています。
【阿波正藍しじら織の製作工程】
①かせ上げ
「かせ」とは、輪形にまとめられた糸のことです。
専用の機械を使って、織物のもとになる糸を管に巻きつけます。
糸をまとめることで、染色しやすくしているのです。
②染色
かせを染色する工程です。
天然藍の他、化学染料なども用いてさまざまな色彩に染めていきます。
藍染は、糸を藍に漬け込む時間の長さに比例して、色が濃くなります。
③水洗い
阿波藍の持つ本来の色合いを出すため、染色した糸を何度も水で洗います。
④天日干し
水で洗った糸にフノリを付け、糸が毛羽立たないように注意しながら天日干しします。
藍は空気と接触して酸化することで、より美しい色が表れてきます。
藍染めは、一度だけでは完成しません。
「染色 → 水洗い → 天日干し」を何度も繰り返すことで、目指すべき色に近づけていきます。
⑤糸繰
藍色に染め上げた糸を、糸枠に巻き取る工程です。
⑥整経・緯巻
整経とは、織り作業に必要な本数・長さに経糸を揃える作業です。
また、緯巻とは、杼という織機の道具に緯糸を通す作業をいいます。
⑦機織り
経糸と緯糸の本数と組み合わせで張り具合を調整しながら、シボを作るように織っていく工程です。
平織と引き揃えの糸の組合せを変更しながら織ります。
⑧乾燥仕上げ
生地が織り上がったら、シボを出すためにお湯に浸けます。
最後に乾燥させたら完成です。