【伝統的工芸品のご紹介】~京指物(京都府)~
2023.03.3 伝統工芸品について
【名称】
京指物
【京指物の産地】
京都府
【京指物とは?】
京都府で製作されている木工品。
釘などを使わず、「組み手」という木と木を組み合わせる技法を用いて作ります。
箪笥や机などのキリ製品が代表的な「調度指物」、茶道に用いる箱や棚などの「茶道指物」、木の素材を活かして作る「挽物」などがあります。
なお、「指物」とは組み手を用いて作られる家具、調度品などのことです。
さまざまな技法を巧みに扱うことで、500種類を超える製品を生み出すことができると言われています。
1976年6月、伝統的工芸品に指定されました。
【京指物の特徴】
京都らしい雅やかなデザインが特徴です。
京都に都(平安京)があった平安時代が、京指物の起源であると伝わっています。
天皇や貴族を中心とした雅な文化が開花したこともあり、上品さを求められました。
当時の優美な趣が今なお残っていますし、そこに茶道文化や町人文化が融合することで、さらに多彩な表情を併せ持つようになります。
1200年近くにわたって受け継がれてきた技術も、特徴の一つであると言えるでしょう。
伝統的な技術はもちろん、各時代に合った技術を開発し、発展させてきました。
【京指物の歴史】
京指物の起源は、平安時代であると言われています。
日本は森林に恵まれて木材が豊富にあったこともあり、古来より木を材料とする工芸が発達していました。
そこに中国大陸などから伝来してきた石や金属の文化が加わったことで、製作に使える道具を真似つつ、日本独特の木工品が誕生したのです。
平安時代に製作されていたのは、主に宮廷で行われる儀礼で用いる物差しなどでした。
作っていたのは、大工を生業にしていた人たちです。
それが室町時代になると、「指物師」という専門職が現れます。
武士が台頭してきたことで、箪笥や棚などの調度品の需要が高まってきたからです。
安土桃山時代には茶道の普及により、茶道具だけではなく、床の間のある座敷にも使われるようになったので、京指物の需要が一気に高まります。
江戸時代になると、武家用だけでなく商人向けや歌舞伎役者向けなど、多種多様な作品が作られるようになりました。
さまざまな技術や文化が合わさることで、さらに進化を遂げます。
スパイスラックや照明など、現在は新しい商品開発にも積極的に取り組んでいます。
現代風でありながらも、素材である木の温かさを感じることができるので、多くの人々に愛され続けているのでしょう。
【京指物の製作工程】
京指物に用いられる木材には、ケヤキ、ヒノキ、スギ、サクラ、マツなどがあります。
この記事では、京指物の代表格であり、高級品として名高いキリ箪笥の製作工程を紹介していきます。
①荒木取
キリが好んで用いられるのは、以下の理由です。
・断熱性に優れている
・防湿効果に優れている
・防虫効果がある
・各部を比べてみても、材質的に異なることがない(均一である)
・汚れが付きにくい
まず行われるのは、素地作りです。
樹皮を剥いた原木を積んだら、1年以上も野ざらしにします。
なお、樹皮を剥くのは、木が成長しないようにするためです。
次に、原木を製作物に合わせたサイズに挽き割り、さらに1年以上かけて乾燥させます。
乾燥後、サイズに合わせて板や角材に挽き、また乾燥させます。
製作物の寸法に合わせて「すみ付け」を行ったら、最後に木取りを行います。
※すみ付け
材料となる木材に位置を記すこと。
印を付けることで情報共有をし、加工時に間違えないように行う。
(逆に、すみ付けを誤ると加工した後に間違ったものができてしまうので、とても重要)
②矯正
板がねじれていたり、反りがある場合に行う工程です。
反っている板の内側に水をかけ、逆側は火であぶり、重石を乗せたら丸一日置いておきます。
水の量や火加減が大切なので、熟練した職人による高い技術力が必要な工程です。
③荒削り
矯正が完了した木材を、寸法通りに削っていきます。
④寸法決め
「かねざし」などを用いて、すみ付けを行います。
墨などの筆記具は使わずに、「しらがき」という線を引く道具を用いて、正確に線を引いていきます。
⑤組手加工
板同士を組み合わせる「組接ぎ」と呼ばれる技法を用いる工程です。
二枚組接ぎ(板の上端と下端を均等に切り欠き、打ち付ける技法)、三枚組接ぎ、石畳組接ぎなどがあり、強度を高めるだけでなく見た目も美しく加工できます。
⑥木釘作り
「ウツギ」を使って木釘を作る手順は、以下になります。
・ウツギを20cmほどの長さに切る
・ナタを用いて、ウツギの厚さが4〜6mmほどの厚さになるように割る
・板状になったウツギを、木目に沿ってさらに割り、割りばしの様に棒状にする
・小刀で削って丸くする
・必要な長さに切断する
・糠と一緒に火であぶって水分を無くしたら、木釘の完成
⑦組み立て
⑤の工程が完了した箇所に接着剤を塗って繋ぎ合わせたら、キリで穴を開けます。
木釘の先に接着剤を塗ったら、カナヅチを使って、開けた穴に打ち込んで組み立てていきます。
引き出しを組み立てたら、隙間なく箪笥に閉まるように、カンナで削って微調整します。
なお、接着剤は、お米をよく練って作ったものを用います。
⑧仕上げ削り
平面がなめらかになるように、繋ぎ合わせた部分などを平カンナで削っていく工程です。
なお、丸面などは、丸みを持たせるように削っていきます。
⑨仕上げ加工
トクサなど天然の研磨剤で、表面を磨きます。
磨き終えたら、キリ本来の良さを引き出すため「いぼたろう拭き仕上げ」を行います。
これは「イボタロウムシ(虫)」が分泌する液体を木綿袋に入れて、表面を磨いていく技法です。
⑩加飾
加飾は、必要がある場合に行う工程です。
代表的なものは、以下になります。
・蒔絵
漆で模様を描いた後、漆が乾く前に金属粉を蒔いて文様を仕上げていく技法
・象嵌
模様を刻み込んだ後、そこに金などをはめ込む技法
加飾が終わったら、最後に取っ手などを取り付けたら完成です。