【伝統的工芸品のご紹介】~丹波立杭焼(兵庫県)~

【伝統的工芸品のご紹介】~丹波立杭焼(兵庫県)~

【名称】

丹波立杭焼

 

 

【丹波立杭焼の産地】

兵庫県篠山市

 

 

【丹波立杭焼とは?】

兵庫県篠山市の今田周辺で製作されている陶器。

古来の陶磁器窯のうち、中世から現在まで絶え間なく生産が続いている代表的な6つの産地を「日本六古窯」と言います。

丹波立杭焼は、その一つに選ばれており、他の5つは「越前」「瀬戸」「常滑」「信楽」「備前」です。

 

丹波立杭焼の誕生は800年ほど前であると言われていますが、日々の生活に用いられる日用雑器を焼き続けています。

 

1978年2月、伝統的工芸品に指定されました。

 

・越前焼の記事はこちら

・信楽焼の記事はこちら

 

 

【丹波立杭焼の特徴】

最大の特徴は、「灰被り」による色合いや模様です。

丹波立杭焼は、約1,300℃ある登り窯の中で、60時間ほどかけてじっくり焼かれます。

その間に、燃料として使われている木材の「灰」が焼き物に被り、「釉薬」や土の鉄分などと化学反応を起こすことで、独特の色合いや模様が表現されるのです。

色合いや模様は、灰の量やかかり具合によって変わりますし、火の当たり方によっても変化します。

まったく同じになることはなく、全てが世界に一つだけの陶器であると言えるでしょう。

 

もう一つの特徴は、「ろくろの回る方向」です。

一般的には右回りでろくろを回すことが多いですが、丹波立杭焼では、左回りでろくろを回して製作されます。

 

 

【丹波立杭焼の歴史】

窯の稼働が始まったのは、今から約800年前の平安時代末期であると伝わっています。

そこから桃山時代までの400年ほどは、小野原荘が生産の中心だったため「小野原焼」と言われていました。

当時は、現在のようにろくろは使われていませんでした。

粘土をヒモ状にして、それを積み上げながら作る「ヒモ作り」が行われていたからです。

地中に穴を掘って作られた「穴窯」で焼き、釉薬も使用せず、大型の壺、すり鉢などが作られていました。

 

江戸時代に入り、朝鮮半島から伝わってきた「登り窯」が築かれるようになります。

また、製作時にろくろや釉薬も用いられるようになりました。

この結果、大量生産が可能になり、名前も「丹波焼」と呼ばれるようになったのです。

江戸時代の中頃には、茶器や小型の徳利など、幅広い種類の製品が作られるようになりました。

 

明治時代になると、生産地の中心が立杭地方に移ります。

この頃から「立杭焼」として呼ばれるようになり、東北地方から九州まで、日本各地で販売されるようになりました。

 

 

【丹波立杭焼の製作工程】

①採土

原料となる粘土は、「四つ辻粘土」と「弁天黒土」のどちらか、もしくはこれらと同質の土が使われます。

 

四つ辻粘土は、兵庫県三田市にある四つ辻大池の底に堆積したものであると考えられていて、古来丹波焼の陶土として用いられてきました。

弁天黒土は、今田町にある篠山盆地の田土で、江戸時代の初めから陶土として使われ始めたと言われています。

 

なお、陶土の生産は、丹波立杭陶磁器協同組合の坏土工場で行われています。

 

②土練り

 

坏土を混練する機械である「土練機」を用いて、粒子の細かさや含まれる水分量を均一にしていきます。

その次に、今度は手作業で念入りに土を練り上げ、土の中にある空気を抜いていきます。

この作業を行うことで、焼成時にヒビなどが出にくくなるのです。

 

③成形

 

一つずつ、台の上で成形していきます。

代表的な成形方法は、以下の通りです。

 

ろくろ(蹴りろくろ、電動ろくろ)

主に、丸い形の製品を作る際に用いる方法。

 

鋳込み成形

四角形などの角形、複雑な形を作る際に用いる方法。

陶土を石膏製の型に流し込んで成形する。

 

手びねり

陶土を台の上で伸ばしながら成形する方法。

 

押し型成形

型に陶土を押し当てながら成形する方法。

 

④削り

 

半乾きの状態で、陶土にまだ粘性が残っている間に行う工程です。

帯鉄や竹製のカンナなどを用いて、お茶碗の足の部分(高台)を削ったり、縁の部分を仕上げたり、細やかな作業を行います。

 

⑤乾燥

 

3〜4日かけて天日干しを行い、十分に乾燥させます。

なお、窯の余熱を活用して、室内で乾燥させる方法が現在の主流です。

 

⑥素焼き

 

700〜900℃で素焼きを行います。

素焼きを行うことで、釉薬が陶器の素地に馴染みやすくなります。

 

⑦釉掛け

 

釉薬をかける工程です。

丹波立杭焼で使われる主な釉薬は、以下になります。

 

・木灰

・ワラ灰

・もみがら灰

・栗イガ灰

・竹葉灰

・土灰釉

・鉄釉

・白釉

 

釉薬をかけることで、色彩やツヤ、光沢を出すことができます。

また、漆器の表面をコーティングすることになるので、水分の吸収を防いだり、割れにくくするなどの効果も期待できます。

 

⑧窯詰め

釉掛けした品々を、窯の中に詰めていく工程です。

小さめのものは、大きな作品の中に入れたり、専用の器の中に入れたりします。

また、作品を重ねる場合は、接触する箇所にモミ灰などを間にはさみます。

 

⑨本焼き

 

窯の温度を徐々に上げていく最初の段階を、「炙り」または「ぬくめ」と言います。

これを30〜40時間ほど行ってから、燃料となる松薪を窯の中に投げ入れる本焼きに移ります。

本焼きの温度は1,300℃ほどで、まる一日焼き続けます。

 

⑩窯出し

 

本焼きが終わった後、窯を密閉させたら、一昼夜かけて製品を冷まします。

その後、取り出したら完成です。

通常、窯に入れてから取り出すまで、1週間ほどかかります。

 

 

 

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