【伝統的工芸品のご紹介】~村上木彫堆朱(新潟県)~

【伝統的工芸品のご紹介】~村上木彫堆朱(新潟県)~

【名称】

村上木彫堆朱

 

 

【村上木彫堆朱の産地】

新潟県村上市

 

 

【村上木彫堆朱とは?】

新潟県村上市で製作されている漆器。

村上地域は、天然漆の産地として平安時代から広く名が知られていたのです。

精妙に彫られた彫刻や色彩豊かな漆で仕上げられていながら、かたくて丈夫でもあります。

 

1976年2月、伝統的工芸品に指定されました。

 

 

【村上木彫堆朱の特徴】

大きな特徴は、「頑丈さ」と「ツヤ感の変化」です。

村上木彫堆朱は、日常生活で頻繁に使われても持ち堪えられる丈夫さを備えています。

また、愛用し続け年数が経つにつれて、奥深さのあるツヤへと変わっていく姿に趣深さを感じるでしょう。

飾っておく美術品としてではなく、日常使いしてこそ、村上木彫堆朱の存在価値を感じることができると言えるかもしれません。

 

元になったと言われているのが「堆朱」ですが、これは朱漆を塗り重ねて文様を彫り表したものです。

一方、村上木彫堆朱は、まず木地に彫刻を施してから、漆を塗っていきます。

この手順で行うことで、使う漆に無駄が生じず、躍動感あふれる彫りや繊細な文様が可能になりました。

 

彫った溝に流れ込むことのないよう固めの漆を用いますが、これを塗り重ねることが丈夫さの理由の一つになっています。

製作工程に「ツヤ消し」があるので、完成時にはツヤが抑えられた仕上がりになっています。

しかし、何度も使用するにしたがって、ツヤ感が増していく作りになっています。

 

 

【村上木彫堆朱の歴史】

村上木彫堆朱の起源は、およそ600年前の室町時代です。

当時、寺院を建築するため、京都から訪れていた漆職人が始めたことがキッカケであると言われています。

 

江戸時代に入ると、村上藩の歴代藩主たちによって漆器製作が奨励されます。

1700年代後半には「漆奉行」が設けられたことで、漆の木の生産がより盛んに行われるようになりました。

 

1800年代には、現在も生産されている「堆朱」や「堆黒」が作られるようになります。

 

1900年代になり、参勤交代によって江戸で勤務していた村上藩士たちは「漆を塗る技術」や「模様を表現するために彫り込む技術」を学び始めました。

江戸で学んだ技術を村上に持ち帰ったことにより、ますます漆器製作が発展していったのです。

 

幕末には、堆朱彫りの名工として名高い「有磯周斎」を、世に送り出しました。

現在も受け継がれている村上木彫堆朱の礎を築きましたが、彼が行ったことを以下に挙げます。

 

・彫刻を施した素地に黒漆を塗った後、朱漆で装飾する「鎌倉彫」の改良

・漆地に色漆で文様を描くなどする「存星」の研究

・中国風のデザインに写生を加えた

・越後を代表する画人から画法を学び、彫刻に応用した

 

 

【村上木彫堆朱の製作工程】

制作技法は江戸時代からほぼ変わっておらず、すべての工程が手作業で行われます。

「木地師」「彫師」「塗師」が分業制を取り、一つの製品を作っていきます。

 

①木地作り

 

材料となるのは、ホオノキやトチノキなどです。

しっかり乾燥させた後、製品の全体像を形作ります。

 

②下絵

下絵は、木地に直接描かれます。

描かれる柄は、山水、花鳥、牡丹唐草などさまざまです。

 

③彫刻

 

「裏白」と呼ばれている両刃の彫刻刀を使って、下絵の上から彫る工程です。

ちなみに、鏡餅の下に敷く葉「裏白」に似ていることから、村上ではこのように呼ばれています。

 

④トクサがけ

彫った後は刀痕が荒く残っているので、サンドペーパーを用いて磨いていきます。

磨いて滑らかな表面にすることで、漆のノリを良くするのです。

以前は、トクサを使って磨いていました。

 

⑤木固め

生漆とベンガラを混ぜたものを、製品の表面にすり込んでいきます。

表面には細かい穴が多数あるので、刷り込むことで穴を埋めることができるのです。

この作業が、頑丈な堆朱の基礎となります。

最後に模様が描かれた箇所に下塗りを行ったら、凹凸をなくして平らにします。

 

※ベンガラ

黄土を焼いて作られるもので、赤色顔料や研磨剤として用いられる。

 

⑥サビ付け

生漆と砥の粉を混ぜたものを、彫りのないところに繰り返し塗る工程です。

一般的には、2〜3回行われます。

 

⑦サビ研ぎ

サビ付けとセットで行われる作業です。

サビ付けした後、砥石を用いて表面が平らになるように水研ぎします。

 

⑧中塗り

模様が消えてしまわないように、彫った溝の部分を埋めずに漆を塗ります。

指の先を上手く使って、漆を叩くように塗りこんでいくのがポイントです。

最後に、ハケで仕上げます。

 

⑨中塗り研ぎ

キメの細かい村上砥石で、製品の表面全体を丁寧に水研ぎしていきます。

 

⑩上塗り

朱漆を塗る工程です。

 

⑪ツヤ消し

ツヤを消すため、砥の粉などを用いて研いでいきます。

 

⑫毛彫

毛彫とは、その名の通り、毛のように細い線を彫っていく技法です。

先端が細い三角刀を用いて、彫師が繊細な彫刻を施していきます。

 

⑬上すり込み

 

塗り師によって、製品全体に生漆をすり込み、表面を整えたら完成です。

 

 

 

 

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