【伝統的工芸品のご紹介】~出雲石燈ろう(島根県)~

【伝統的工芸品のご紹介】~出雲石燈ろう(島根県)~

【名称】

出雲石燈ろう(いずもいしとうろう)

 

 

【出雲石燈ろうの産地】

島根県松江市・出雲市周辺、鳥取県境港市など

 

 

【出雲石燈ろうとは?】

島根県松江市・出雲市周辺などで製作されている石工品。

材料となる原石は、島根県松江市宍道町の来待地区で採れる「来待石(きまちいし)」です。

来待石は、1400万年前の火山堆積物が海底に堆積してできた「凝灰質砂岩」で、粒子が細かいです。

 

1976年6月、石工品として初めて伝統的工芸品に指定されました。

 

 

【出雲石燈ろうの特徴】

出雲石燈ろうの特徴は、主に3つあります。

・吸水性が高い

・耐久性に優れていて、暑さや寒さにも強い

・形状の種類が豊富(130以上)

 

伝統的な日本庭園になくてはならない存在なのが、コケです。

来待石は吸水性が高いのでコケの付くスピードが早く、まるで自然に溶け合うかのように庭園に馴染んでいきます。

コケがあることでさらに趣き深い庭園になるので、「和」を表現するのに出雲石燈ろうは重宝されてきました。

また、時間の経過とともに色も移り変わっていくので、ますます風情が出てくるのも魅力のひとつです。

茶聖と称さる千利休の心をとらえて離さなかったという逸話からも、出雲石燈ろうの存在感の大きさを

物語れるのではないでしょうか。

 

江戸時代に作られた出雲石燈ろうが未だに庭園に存在し続けていることから、耐久性が高いことがわかります。

そして種類が豊富なことから、現在でも全国各地の日本庭園で使われ続けているのです。

 

 

【出雲石燈ろうの歴史】

出雲石燈ろうが誕生したと言われているのは、奈良時代~平安時代頃です。

当時は、照明器具として用いられていました。

また、現在のように来待石ではなく、御影石(みかげいし)が使われていたと伝わっています。

 

室町時代から安土桃山時代にかけて、茶の湯文化が大きく開花します。

その結果、わびさびの精神を感じる日本庭園の人気が高まり、庭園の景趣に合う石燈ろうが

好んで使われるようになりました。

 

江戸時代になり、松江藩が来待石の価値を認めると、建材にも用いられるようになります。

貴重な存在である来待石を守るため、松江藩は「藩外への持ち出し禁止」「職人以外の採掘禁止」

「職人たちの囲い込み」など、保護政策を進めました。

 

明治時代から現在にかけては、庭園だけではなく室内インテリアとしても注目を集めるようになります。

また、日本国内だけではなく、海外では芸術作品としての需要が増えるなど、高く評価されています。

 

 

【出雲石燈ろうの製作工程】

①原石の発掘

 

出雲石燈ろうの材料となる原石は、来待石です。

松江市宍道町来待地区を中心にして、東西10kmほどに渡っている砂岩層から産出されます。

来待石は、1400万年も前の火山堆積物が海底に堆積してできた「凝灰質砂岩」で、粒子のきめ細かさが特徴です。

加工しやすいこと、色調が日本庭園によく馴染むことも魅力となっています。

 

②型作り

原石を切り出したら、型造りを行います。

主に用いる道具は、「つるはし」「手斧」「のみ」「三本刃」などです。

全体的な調和をはかりながら、曲線などの丸みや稜線を見つつ、奥ゆかしい形状になるように形作っていきます。

 

③接合

一般的な立燈ろうは、上から準備「玉」「笠」「火袋」「受鉢」「柱」「地輪」の6つで構成されています。

接合作業では、笠と火袋以外の箇所を「丸ホゾ」によって、一つずつ接合していきます。

 

※丸ホゾ

材料に作られる「丸い突起」のこと。

もう一方の材料に穴を開け、その穴に突起(丸ホゾ)をはめ込んで固定していく。

 

④彫り

石燈ろうを彫り、装飾を施していきます。

どのような模様を入れるかで彫る方法が異なり、代表的なのは以下の通りです。

・浮き彫り

雲、龍、鷲(ワシ)、鹿、紅葉など

 

・筋彫り

扇、縄模様、波、松、龍など

 

・透かし彫り

月(満月、半月など)、瓢箪(ひょうたん)、窓、こうもり、井桁模様、輪違い紋など

 

・丸彫り

梟(フクロウ)、猿など

 

⑤仕上げ

 

専用の工具を使い、表面を仕上げていきます。

代表的な仕上げ方は、以下の通りです。

・みがき仕上げ

・つつき仕上げ

・たたき仕上げ

・がんがん仕上げ

・なぐり仕上げ

 

各方法によって、職人の手で石肌をなめらかにしたり、ざらざらにしていきます。

その他、粒状、鮫肌状、当線状などさまざまあるので、

「石燈ろう全体の見た目」「設置する庭園の雰囲気」に合わせて表現方法を選択していきます。

 

⑥最終チェック

 

出雲石燈ろうには多くの種類がありますが、

「その形に合った持ち味が活かされているかどうか」が重要視されています。

石燈ろう全体としての調和が取れているかどうかはもちろん、

設置される庭園や周囲の自然環境に合うかどうかなど、総合的に考えて製作されます。

その全ての水準に達して初めて、出雲石燈ろうとして認定されるのです。

 

 

 

 

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