【伝統的工芸品のご紹介】~琉球漆器(沖縄県)~

【伝統的工芸品のご紹介】~琉球漆器(沖縄県)~

【名称】

琉球漆器(りゅうきゅうしっき)

 

 

【琉球漆器の産地】

沖縄県

 

 

【琉球漆器とは?】

沖縄県で製作されている漆器のこと。

中国大陸から伝わってきた漆器の製作技法に、沖縄で育まれた独特の要素を組み合わせていくことで、独自の発展を遂げてきました。

技術だけではなく、芸術性の高さも世界中で高く評価されています。

 

沖縄の気候環境が、漆の生産に非常に向いています。

また、素材となる沖縄特有の材木(デイゴ、エゴノキ、ガジュマルなど)の質が良く、漆器の生産に恵まれた土地でした。

このように素材が育つ環境として好条件であったこと、そして職人たちの日々の努力の積み重ねにより、唯一無二の存在感を放っています。

 

1986年3月、伝統的工芸品に指定されました。

 

 

【琉球漆器の特徴】

最大の特徴は、加飾する技術・方法の豊富さです。

主なものは、以下になります。

 

堆錦

立体的な文様を表現できる、沖縄独自の技法。

中国から伝わってきた「堆朱」にヒントを得て、琉球漆器のオリジナルとして誕生しました。

堆朱とは、朱漆を何度も塗り重ねて層を厚くし、文様を彫刻していく方法です。

 

・花塗

油分を加えて光沢を持たせた朱色・黒色の漆を塗り重ねる技法。

元から光沢があるので、磨き作業を行わずに塗ったら仕上がることから、「塗り立て技法」とも呼ばれています。

 

・沈金

沈金刀を使って模様を彫った後、彫った箇所に「くろめ漆」を擦り込む。

漆が乾く前に、金箔を押さえて貼り付けていく技法。

乾燥後にふき取ると、金箔だけが線状に残る。

 

※くろめ漆:生漆から水分を取り除いた、黒褐色の透明な漆

 

箔絵

漆で模様を描き、乾く前に金・銀箔を貼り付け、乾燥後に不要な金箔を筆でふき取る技法。

描いた模様だけに金・銀箔が残ることで、絵柄が現れます。

最後に、黒漆で輪郭となる線を描いたら完成。

 

・螺鈿(らでん)

光沢のある貝殻(アワビ、ヤコウガイなど)を薄く削ったら、

文様に合わせて切り抜き、漆で貼るか、埋め込んでいく技法。

漆が乾いた後、貼った貝が現れてくるまで研ぎ、最後に「鹿の角の粉」でツヤ出しをしたら完成です。

ハイビスカスなど、沖縄漆器に独特の文様を描くのに用いられます。

 

 

【琉球漆器の歴史】

琉球漆器の始まりは、琉球王国であった15世紀ころであると言われています。

当時、中国との貿易が頻繁に行われていたので、漆器を作るための技法も一緒に伝わってきました。

 

琉球地域は、「政治」と「神や仏への信仰」に深い結びつきがありました。

王族だけではなく地方でも、儀式の場では漆を用いた装飾品などが使われてきたのです。

「貝摺奉行所」という漆器製作にかかわる事務、職人たちの育成・指導を監督する役所が設置されていたことからも、漆器が大切にされていたことがわかるでしょう。

文献では1612年に出てくるので、それ以前から組織的に漆器製作を行っていたのではないかと考えられます。

 

1609年、薩摩藩が琉球王国に攻め込みます。

その際に取り上げた琉球漆器を、薩摩藩は徳川家康に献上しました。

それまで中国との関係性が強かったですが、積極的に日本と外交を行っていくようになります。

 

時代と共に主流となる装飾技法や表現方法が、下記のように変化していきます。

・16~17世紀 → 朱や緑漆に「沈金」、朱漆に「螺鈿」

・18~19世紀 → 朱漆に「沈金」「箔絵」「堆錦」

 

1879年に沖縄県になってからは、それまで藩で行っていた琉球漆器の製作を民間(工房、企業など)で行うようになりました。

 

 

【琉球漆器の製作工程】

①木地つくり

 

主な木地は2つありますが、半年ほど乾燥させた木材を使います。

 

・指物木地

接着剤を使って、板を組み立てていきます。

しっかり乾燥させた後、カンナで削りながら形を整えていく作業です。

二重~五重に積み重ねられた料理を入れる箱型の容器である「重箱」、食器や食べ物を載せる台である「膳」などを製作する時に使います。

 

・挽物木地

輪切りにした木を使う「竪挽き」、木目を直角に切断した木を使う「横挽き」の2種類があります。

ご飯や汁物を入れる食器である「椀」、料理などを乗せて運ぶための「盆」などを製作する時に使います。

 

②下地付け

木地作り時にできた割れ目やキズ、空いた穴などを、念入りに「ニービ下地」で埋めていく作業です。

デイゴなど、目が粗い木に塗るのがちょうど良いです。

次に、クチャ下地を塗ってから乾燥させれば、この工程は完了です。

 

※ニービ下地:生漆に沖縄の小禄砂岩を混ぜて作ったもの。

※クチャ下地:生漆と島尻泥岩粉を混ぜて作ったもの。

 

③水とぎ

 

ペーパーや砥石を用いて、水をかけながら研いでいく工程です。

下地作りが完了した後や、塗りの間にかけて数回行います。

まずは荒い目からスタートさせ、徐々に細かい目に変えて研いでいきます。

 

④中塗り

 

次に行う「上塗り」後の仕上がり具合を良くするために行います。

上塗りで使用するのと同じ色の顔料と漆を混ぜ、それを作品に塗っていきます。

 

⑤上塗り

 

最初に上塗り用の漆を、下記2つの手順を踏んで作ります。

・生漆に赤外線、紫外線を当てて水分を蒸発させ、透明な漆を作る。(この作業を「くろめ」と呼ぶ)

・できた透明な漆に朱色の顔料を混ぜると、とろっとした感じなるので、和紙でろ過したら上塗り漆の完成。

 

塗り作業は「上塗り」で完了し、塗り具合がそのまま作品の出来栄えとして判断されます。

作業時の天気、温度などの自然環境によっても変わってくる繊細な作業です。

また、職人たちの長年の経験によって培われた技術を、存分なく発揮させる作業であると言えるでしょう。

 

コシの強いハケを用いて、念入りに塗っていきます。

もし気泡が生じてしまったりホコリが付いてしまった場合は、丁寧に取り除き、塗り終えたら乾燥させます。

また、漆を硬化させるための箱である、回転風呂に入れます。

回転させることで、漆がムラにならないようにしなければいけません。

 

上塗りでは、湿度管理も重要です。

漆は湿度によって色が変化したり、表面ばかりが早く乾燥してしまうと「シワ」ができる縮みが起こってしまうからです。

 

⑥加飾

先述の通り、数多く存在する技法で加飾したら完成です。

 

 

 

 

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