【伝統的工芸品のご紹介】~九谷焼(石川県)~
2020.03.6 伝統工芸品について
【九谷焼とは】
石川県南部の加賀地方で生産されている陶磁器で、江戸時代初期に誕生しました。
五色(緑、黄色、赤、紫、紺青)を用いて描かれる、「上絵付け」と呼ばれている山水や花鳥などの絵画的な装飾が大きな特徴です。
窯ごとに独自性があり、使用している色によって「赤九谷」「青九谷」など、さまざまな画風を生み出しています。
明治時代には「金襴手(きんらんで)」という技法が主流となり、世界的に「ジャパンクタニ」と呼ばれ特に名が知れ渡っています。
【歴史】
明暦元年(1655年)頃、石川県山中町九谷の地で良質の陶土が発見されました。
それを機に、大聖寺藩初代藩主・前田利治が家臣・後藤才次郎に命じて肥前有田郷で製陶の技術を修行させ、導入したのが九谷焼の始まりであると言われています。
この時期に製陶されたものは「古九谷(こくたに)」と呼ばれ、17世紀以降に日本で作られた色絵磁器の中でも、品位風格があり豪放華麗な作風です。
古九谷は、「有田の柿右衛門、古伊万里、色鍋島」や「京都の仁清」などと共に高く評価されています。
古九谷の始まりから約350年を経た現在もなお、その伝統美は受け継がれ続けています。
【釉裏金彩】
釉裏金彩とは、金液ではなく金箔を使った技法です。
厚さの異なった金箔を切り取って模様をつくり、その上から透明度の高い釉薬を掛けて焼き上げる方法で、絵の具を使って筆で描くものではありません。
人間国宝であり第一人者である吉田美統氏の釉裏金彩は、薄い金箔(薄箔)と厚い金箔(厚箔)を使い分けることで立体感を出しています。
また、多くの作業工程があり、一つひとつの作業が繊細なため、とても手間が掛かります。
窯焚は最低5回必要で、本焼きした後に漆を塗り、金箔を模様通りに切り取り、漆の乾き具合を見て丁寧に貼っていきます。
【釉裏金彩の作業工程の概要】
①作品(磁器)を成形
②2回焼く(真っ白な磁器が出来上がります)
③白い磁器全面に釉薬をかける
④3回目の窯入れ
⑤トレーシングペーパーにつけたデザインを器に移す
⑥下絵に合わせて金箔を切り取る(細かいデザインでは100枚以上の金箔を用いる事もある)
⑦金箔の型が全て切り揃ったら一枚づつのりで貼り付ける
⑧金箔を貼り終えたら、低温で金箔を焼き付ける
⑨4度目の窯入れで器の表面にある不純物を取り除く
⑩金箔の上から透明釉を、筆で丁寧に器全体に掛ける
⑪5回目の焼成
⑫完成
※薄箔、厚箔によるコントラストで上品で優雅な作品の出来上がりです。