【伝統的工芸品のご紹介】~越中和紙(富山県)~
2023.02.7 伝統工芸品について
【名称】
越中和紙
【越中和紙の産地】
富山市八尾町、富山県朝日町、富山県南砺市
【越中和紙とは?】
富山市八尾町、富山県朝日町、富山県南砺市などで作製されている和紙。
「五箇山」「八尾」「蛭谷」の三産地で作られている和紙をまとめて、越中和紙と呼んでいます。
古典的な和紙の製作だけではなく、和紙を加工した小物類、観光土産などの新商品開発にも積極的に取り組んでいます。
1988年6月、伝統的工芸品に指定されました。
【越中和紙の特徴】
三産地それぞれに特徴があることが、越中和紙の魅力であり特徴です。
・五箇山
五箇山地域は豪雪地帯であり、そのような自然環境にも耐えられる強さが特徴。
丈夫さの源となっているのは、地元で採取できるコウゾです。
コウゾは繊維が長く、お互いに絡み合う性質があるので、厚さは薄くても丈夫になります。
障子紙、版画用の紙、重要文化財を補修するための紙などが、主に製作されています。
・八尾
型紙を使って柄を染めていく染色技法である「型染め」が用いられており、鮮やかな色や柄が特徴的。
耐水性が高く濡れても破れにくいので、富山の薬売りに活用されていました。
模様紙、和紙を加工した品などが、主に製作されています。
・蛭谷
耐久性や丈夫さに優れていながら、柔らかい風合いが特徴。
書道や絵画に使用する和紙などが、主に製作されています。
【越中和紙の歴史】
774年に正倉院の文書として書かれた『図書寮解』に、越中が紙の産地であることが書き記されています。
よって、当時には既に和紙の製作が行われていた可能性が高いでしょう。
また、927年に完成した法典である『延喜式』には、越中で作られた和紙が租税として納められていたことが記録されています。
越中富山藩の第二代藩主・前田正甫が、薬の販売を推し進めます。
その結果、薬を分包するために用いる紙、薬売りのかばんの素材として越中和紙(八尾和紙)のニーズが高まりました。
また、加賀藩の御料紙(藩主が公式儀礼に用いる紙)として五箇山和紙が使用され、その名が知れ渡ります。
明治時代に入り、機械による大量生産で洋紙が出回るようになり、和紙の需要は一気に低下しました。
しかし、越中和紙にかかわる人々によって、伝統技法の承継や後継者の育成などが現在も続けられています。
【越中和紙の製作工程】
①水浸し・雪さらし
コウゾの皮を水で漂白して乾燥させたもの(白皮)を、1~3日ほど水に浸けます。
この作業を行うことで白皮が柔らかくなり、付着していたゴミなどを取りのぞくこともできます。
この他、14日ほどコウゾを雪にさらしながら漂白する「雪さらし」が行われることもあります。
②煮熟
苛性ソーダなどの水酸化ナトリウム溶液に白皮を入れ、2時間ほど煮詰めます。
白皮の繊維を溶かすために行う作業です。
③あく抜き
ひと晩放っておいた後、水で流しながらあく抜きを行います。
④漂白洗浄
この工程は、白い紙を作る場合に必要です。
さらし粉などを使って、漂白洗浄します。
⑤ちり取り
水に浸して、繊維の中にあるゴミ、変色してしまった繊維を除去します。
仕上がりをキレイにするため、一つひとつ手作業で念入りに行うことが重要です。
⑥叩解
繊維を叩きながら、ほぐしていく作業です。
繊維を叩くことで、粘り気が出てきます。
ビーターと呼ばれる専用の機械を使用して行ったり、木づちなどを使って職人の手作業で行ったりします。
⑦紙すき
紙をすく原料を入れておく長方形の水槽を、すき船と言います。
中に入れるのは、柔らかくした繊維、水、ネリを混ぜ合わせた液体(=紙料)です。
ネリとは、くだいたトロロアオイの根から採取する透明の粘液で、繊維同士がくっ付かないようにする役割を果たします。
越中和紙を作る方法は、伝統的な紙すき技法である「流しすき」です。
「すけた」と呼ばれる木枠に紙料をくみ込み、揺すりながら厚さを均一にしていきます。
その後、板の上に一枚ずつすいた紙を積み重ねていき、「紙床」ができたら完了です。
⑧圧搾
作った紙床は、ひと晩放置します。
その後、圧搾機を用いて水分をしぼり取っていきます。
⑨乾燥
紙床から一枚ずつ紙をはがしたら、天板に貼りつけて乾燥させる工程です。
陽を当てて自然乾燥させる方法と、機械によって乾燥させる方法の2種類あります。
⑩選別
厚さが均等になっているか、ゴミやキズはないかなど、一枚ずつ丁寧に確認します。
⑪型染め
「型染め」とは型紙を使って柄を染めていく染色技法で、模様付きの和紙を製作する際に行います。
繊維の奥まで染料が染み込んでいくので、もしよれてしまっても模様が鮮明なまま保たれやすいです。
⑫裁断
障子紙の場合は、最後に裁断したら完成です。