【伝統的工芸品のご紹介】~天童将棋駒(山形県)~
2019.05.20 伝統工芸品について
【歴史】
山形県天童市は古くから将棋駒の産地として有名ですが、日本で生産される将棋駒の9割以上が天童市産です。
しかし、現在は「木地にスタンプで印字する押し駒」「機械彫りの低価格の彫駒」が広く普及したため、
伝統的な天童書体の書き駒の職人が少なくなっています。
1996年、天童の将棋駒は伝統工芸品に指定されました。
もっぱら実用品であった駒ですが、現在では工芸価値のあるものに変化してきています。
【製造工程】
①木地の準備
駒木地の原料となるツゲの板材を何年か乾燥させた後、駒のサイズに合わせて四角形に木取りをします。
木取りを行った中から木目模様の似た四角形を40枚選んだら、五角形の駒形に切りそろえます。
②40駒分の字母紙(じぼし)を作る
字母紙とは、駒の書体を印刷した紙です。
薄紙に40駒分の字を書き写します。
③字を彫る
字母紙ができたら一枚ずつ切って、駒木地に貼りつけます。
その後、駒彫り台に固定し、印刀を使って一枚ずつ文字を掘り込みます。
④彫り埋め
40駒をすべて彫ったら、砥の粉(とのこ)と生漆(きうるし)で錆漆(さびうるし)を調合し、彫った部分を錆漆で埋めます。
漆は乾燥すると沈着するため、「錆漆で彫りを埋めて乾かす」という工程を、表面が平らになるまでくり返します。
⑤盛り上げ/瀬戸引き
彫りが埋まり、完全に漆が乾いたら、研磨紙で研出(とぎだ)します。
目の細い研磨紙で研出した後、瀬戸物で表面を磨くことを「瀬戸引き」といいます。
⑥盛り上げ/磨き
蒔絵筆を使って、漆で字を浮き出るように盛り上げていきます。
漆を立体的に、かつ均一に乗せるには、盛り上げ師の高度な技術が必要です。
こうしてできた盛り上げ駒は、プロ棋士が対局で使う最高級品となります。
【将棋/将棋駒とは】
将棋は2人で行うチェスに似たゲームで、縦横各9列の盤上に配置された20枚の駒を移動させ、相手の王将を詰めた方が勝ちです。
将棋の起源は11世紀頃で、古代インドで生まれた「チャトランガ」というゲームにあるとの説が有力です。
日本には、中国経由で伝わったと言われています。
また、将棋駒とは、盤上に並べて動かす用具のことです。
各駒を識別するため、先が尖った五角形の木片の表裏面に文字が書かれています。
なお、将棋の漢字表記は、日本で当てられたようです。
※指し駒、置き駒、将棋盤の重量は、使う素材や切り取る部位によって変わってきます。
【指し駒の読み方】
・王将:おうしょう x 2
・金将:きんしょう x 4
・銀将:ぎんしょう x 4
・角行:かくぎょう x 2
・飛車:ひしゃ x 2
・桂馬:けいま x 4
・香車:きょうしゃ x 4
・歩兵:ふひょう x 18
左馬(ひだりうま)の由来
左馬:昔から福を招くめでたいもの、商売繁昌の守り駒として人気があり、近年は競馬愛好者の間で静かなブームをまきおこしている。
①馬の字が逆に書かれていることから、ウマの逆はマウ(舞う)。
古来、舞いはめでたい席で催されることから、縁起のよい招福の駒である。
②文字の下の部分が財布の巾着の形に似ており、口も締まっているように見えるので
「入ったお金が散逸しない」という福のシンボルであると考えられている。
③普通、馬は人に引かれるものであるが、逆に馬に人が引かれて入ってくることから、客商売にとっては
「千客萬来」「商売繁盛」に繋がると考えられている。
④馬は元来左から乗るものであるということから、左馬は乗馬のシンボルであり、これを持つ者は競馬に強いと言われている。
素材:西洋ツゲ
日本で国産黄楊材が不足していることから、色合いと硬さが似ている西洋ツゲが昭和40年頃より使われている。
※高知県安芸市の須藤信喜氏が北米より持ち帰り、繁殖栽培し、全国へ普及したといわれている。
素材:中国雲南省産黄楊
学問的には、日本産の黄楊と同じです。
しかし、育った土壌などの違いなのか、やや粘り気が少なく、堅くてもサクサクしています。
色合いも日本産とは微妙に異なり、やや渋めの色のものが多いようです。
素材:北米産スプルース
北米から輸入される主要な木材の一つで、材質は軟らかくて軽量。
色調は淡黄白色で、木目は素直で乾燥しやすく加工性がとてもよい。
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